2023年に印象に残った本、映画は?/ペスト、君は放課後インソムニア

まとめ

今さらながら「ペスト」、マンガは秀作が目白押し

2023年もあとわずか。今年読んだ本や、映画、ドラマで印象に残ったものをダラダラと紹介する特別編。年々、時間に余裕がなくなり、今年の新作というのにはあまり手を出せていません。あくまで僕が今年読んだ、観たという範囲での選定です。

ポイント

・名作はやっぱり名作

・芥川賞は小粒だが秀作

・マンガも秀作ぞろい

・巨匠はやっぱり巨匠

名作はやっぱり名作

 今年読んだ中で、印象に残ったのは「ペスト」(カミュ)です。もう70年以上前の作品で、何をいまさら感はありますが。そもそもカミュは知識としては知っていても、これまで読もうとは思ったことはありませんでした。ところが新型コロナ流行で注目され、世間的にもベストセラーに。気になって読んでみると、閉鎖された空間の中で市民の心理はコロナ禍の状況と酷似していて、考えさせられることも多い良作でした。さまざまな立場の人物による群像劇で、エンターテイメント性も高い。戦争も感染症も人類は何度も経験しているのに、遭遇する時はいつもまるで無防備。過去と現代を見つめ、未来を予測する。この1冊から始めてもらいたいです。

コロナはまだ終わっていない | 本の処方箋 熊野堂 (kumanokokorono-hon.com)

 

芥川賞は小粒だが秀作

 新作はあまり読めていませんが、今年の芥川賞受賞3作には目を通しました。新しい世界を切り開いた、というほどの作品はありませんでしたが、どれも秀作で物語として面白い。最も話題になったのは「ハンチバック」(市川沙央)でしょう。重い先天性の身体障害がある女性が主人公で、作者も同じ障害がある。障碍者の当事者目線で描く世界はこれまでほとんど読んだことがない。僕たちが当たり前と思っていることが、実は傲慢にさえ見られている。特に読書バリアフリーについては、今までほとんど考えたこともありませんでした。この作品をきっかけに、仕事で読書バリアフリーの現場を取材。さまざまな反響がありました。この作者は先天的な障害ですが、後天的な障害は珍しくありません。動けなくなる、見えなくなる、聞こえなくなる。その時、あなたはどうするか。社会はあなたを受け入れるか。思わず考えてしまう作品です。「この世の喜びよ」(井戸川射子)の視点、言葉の選び方、「荒れ地の家族」(佐藤厚志)で描かれる震災後の被災地の生活も読みごたえあります。

マイノリティーは他人ごとか、誰だって可能性 | 本の処方箋 熊野堂 (kumanokokorono-hon.com)

マンガも秀作ぞろい

 今年アニメ化されたマンガも秀作ぞろいです。中でも注目したいのは「君は放課後インソムニア」(オジロマコト)。眠れない夜を題材にした作品は多いですが、それをここまでの青春物語に昇華させているのはすごい。主人公とヒロインはそれぞれに家庭の事情を抱えています。眠れない夜を通じ知り合い、交流を深めていきます。眠れない夜にだって意味はある。そんなエールをもらえる。2人が所属するのが天文部、舞台は石川県。このマイナーな感じもいい(失礼?)。かつて、マンガの主人公が住んでいるのは東京または明確に示していない都会でしたが、最近は地方を舞台にした作品が目立つような気がします。「スキップとローファー」(高松美咲)も青春をリアルに描いた秀作。こちらは東京が舞台ですが、ヒロインの出身は石川県です。

眠れない夜に読みたい | 本の処方箋 熊野堂 (kumanokokorono-hon.com)

巨匠はやっぱり巨匠

 今年は小津安二郎の生誕120周年ということで、小津作品が注目されました。小津が少年時代を過ごした三重県松阪市は、僕の第二の故郷。親しみを感じながらも、今まで作品は見たことがなかったのですが、最後の作品「秋刀魚の味」(1962年)を鑑賞しました。地味で、大きな事件は何も起こらない。描写にも時代を感じるのですが、思わず見入ってしまう。戦後の物語で、戦争は直接描かれてはいないのですが、あちこちに戦争の影が見える。「どう生きるか」とか「戦争とは」「平和とは」と声高に訴えてはいないけれど、何か感じる。良作です(僕が今さら言うまでもないですが)。

 「生きる」(2022年、英国)は、日本が誇るもう一人の巨匠、黒澤明の名作を英国でリメイクした作品。元ネタを知らなくてもまったく問題なく観られます。娯楽作品ではないし、テーマも深いですが、きっと幅広い世代が楽しめるはず。

巨匠の作品を観てみた | 本の処方箋 熊野堂 (kumanokokorono-hon.com)

編集後記

 振り返ろうとすると、いろいろ取り上げたい作品があって、きりがないですね。今年は名作と呼ばれるものをあらためて見直すことが多かった気がします。読みたい本はもっとあるのですが、とにかく追いつかない。仕事をもっと抑えたいのですが、そっちはそっちで忙しさを増していて。暇そうにしている人の時間を分けてほしいと、本気で思っています。買い取るのはしゃくですが、持て余しているならプレゼントしてほしいな。

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