旅に飢えている方へ|サラリーマン2.0

処方

サラリーマン2.0(東松寛文)

効能・注意

・会社を辞めなくても働き方は変えられます。

・休日の過ごし方も変えられます

・旅は働き方、休み方、生き方を変えます。

こんな話

 「仕事がきつい」「会社辞めたい」。大半のサラリーマンがそう思いながら仕事している(と思われる)日本。激務の広告代理店勤務で、社畜寸前だった作者は、会社を辞めずに「週末」と「貯金」を使って、3カ月で5大陸18カ国を制覇し、週末だけで世界一周を達成します。「リーマントラベラー」の身に起こった奇跡とは。コロナ禍で旅に飢えている人垂涎の旅行記、働き方改革論。

働き方改革進んでますか?

 いつの頃からか、働き方改革が叫ばれるようになりました。最近はDXもたびたび聞きますよね。残念ながらうちの会社には無縁。「電話やネットは信用できないから、会社に顔を出して話せ」「DX?何がデラックスなんだ。マツコのことか?」という世界です。

 作者の会社はもっと先進的でしょうが、それでもサラリーマンが個人的に変えられることは限られる。そこで目を付けたのが「休み方」です。休日の過ごし方は自主的に変えられます。そして、休み方が変われば、自ずと働き方も変わります

 週末に旅行に行くため、月曜から金曜を意識して働くようになると仕事の効率がグッと上がったそうです。すると、残業時間が年々減少。もちろん、仕事をさぼっているわけではありません。むしろ評価は年々上がっていく。旅は短期集中なので、行った先では全力で非日常を体験する。それで、人生も豊かになる。旅が休み方、働き方、人生を変える。なるほど、こんな手段があったのか。まあ、うちの場合はまず週休2日制を導入するところから始めないといけませんが。

さまざまな生き方を見つける旅

 作者が海外を旅する理由。それは日本で知ることのなかった「さまざまな生き方」を見に行くためだとか。キューバコンゴ共和国イランなど、海外旅行通もなかなか行かないところを攻めています。これは新聞記者の仕事の面白さと少し似ています。僕も毎日いろんな人に会って、取材を通じその人の人生のほんの一部を疑似体験する。社畜同然に働いても何とか続いているのは、この「旅」のおかげかもしれません。

 作中の旅はどれもうらやましいものばかりですが、お気に入りは香港サウジアラビア。香港では女優の佐々木希さんのグラビア写真の撮影地を訪ね、同じ場所で同じポーズで写真を撮り、ブログに上げる。すると、この写真がGoogle検索の「an・an 香港 佐々木希」で上位に挙がってきます。これがきっかけで、一度断れた高級ホテルでの撮影にも成功。バカバカしいこともやり切れば奇跡が起きる。笑いながらも感心してしまいました。

 サウジアラビアはイスラム教徒以外、外国人は観光目的で渡航できないそうです。ただし、抜け道がある。それがサッカーの公式戦。アジアサッカー連盟の規定で、試合には相手チームの国に観客席のチケットを一定数渡さないといけない。その日を狙って、サウジに入国。試合前に撮影した集団での「お祈り」の写真をSNSにアップしたところ、恐ろしく反応があり、Twitterの投稿は7千リツイートを超え、サウジアラビア人ばかり500人以上のフォロワーが増えました。

 実はサウジはとても親日的な国。でも、日本人と接する機会は少ない。そんな中で、日本人がサウジを紹介してくれたと歓迎しくれたのだとか。さらには「リーマントラベラー」として新聞記事になり、アラビア中に配信されます。近寄りがたい雰囲気のあったサウジのイメージがまるで変わりました

僕のトルコ体験

 作者は旅の楽しみ方として定番をまず抑えた上で、チャレンジすることを勧めています。これには同感です。といっても、旅好きの僕ですが、休みもお金もないので、海外に行ったのは2カ国だけ。トルコスペインで、どちらも仕事でした。

 トルコではブルーモスクカッパドキアなどトルコツアーの定番も訪れたのですが、さらに革製品の製造・直売所に足を伸ばしました。実はトルコは皮製品の世界的な生産地。イタリアの有名メーカーもトルコ製を使用しています。

 売り場ではファッションショーが行われ、美男美女が最新の革製品を身にまとって、アピールします。世界からの観光客も大きな拍手を送り、ショーはいよいよクライマックスという時、僕は売り子さんによって強引にステージ裏に連れていかれました。飛び入りでステージに出演しろというのです。もちろん、モデルのような最新ファッションではなく、ピエロのようなカラフルな特注衣装。観客の大爆笑でショーは幕を下ろしました。

 すると、モデルが売り子に早変わり。猛烈なセールスを始めます。勧められたのは7万円もするリバーシブルのハーフコート。日本人対応の美女が、流ちょうな日本語で迫ります。「高い」というと値引きが始まる。結局5万円まで下がったのですが、こちらは買うつもりはない。ここは強気でがつんと言ってやろうと何とか振り絞った言葉が「ごめん、そんなにお金持ってないんです」。すると、売り子は「ごめんじゃなくて、5万ね」と鮮やかな切り返し。最終的には4万5千円まで下がりましたが、買っていません…。

 こんなことが毎週あれば、人生豊かになりますよね。国内でも、近場でもいいから旅に出たい。プランを考えるだけでもワクワクします。

2 COMMENTS

竹中

いつも楽しみに読んでいます。

休日ですが、仕事をしながら休憩がてらこの記事を読んでいて、パソコン作業をやめました。(笑)

旅行に行って、写真を撮って、絵を描きたいです。

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kumanokokoronohon

コメントありがとうございます。この本は後輩に勧められたのですが、一気読みしました。旅行行きたいですよね。僕はある程度長期滞在して、暮らしを味わいたい派です。
来週は絵画に関する小説も紹介する予定です。

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