どうなる2024年の国際情勢/世界情勢のきほん

実用書

世界情勢のきほん(池上彰)

私たちは、どれだけ世界のことを理解しているのか。ロシアのウクライナ侵攻、イギリスのEU離脱など、大勢の人が予測を外す出来事が続ている。尊敬するビョートル大帝を手本に領土拡大を目指すプーチン大統領。習近平総書記の野望は、毛沢東が実現できなかった台湾奪還。それぞれの国家や国民意識が生まれた歴をひもとくと世界が見えてくる。

ポプラ新書カバーより

国際情勢に詳しいよ、と自信を持って言える人がどれだけいるでしょうか。僕はとても言えません。でも、世界で起きていることには理由がある。その理由は歴史や宗教を理解しなければいけない。池上さんならではの分かりやすい解説で、世界をちょっと知った気になれる1冊です。ニュースが分からない人にこそお薦め。

お薦め度 

ポイント

・政治経済学部

・始まりのフランス

・アメリカは世界一か

・世界は日本と欧米だけではない

政治経済学部

 政治経済学部国際政治コース。恥ずかしながら、僕の大学での専攻です。何が恥ずかしいかって、全然似合わないし、まともに学校に行っていないので、肝心の国際政治はまったく詳しくない。もともと、文学部の歴史学科に行きたかったのですが、就職難の時代に教師にでもならないと仕事がないと断念しました。

 そこで方向転換したわけですが、「沈黙の艦隊」の影響もあり、国際政治には実は興味がありました。政治経済学部は国内でも設置している大学は少ないのに、そこに絞って受験しました。それなのに勉強していない。さらに、今の仕事にも大して生きていないという。何重にも恥ずかしいです。

始まりのフランス

 フランスは世界的に人気の観光立国で、日本でも人気が高いです。華やかなイメージの強いフランスですが、フランスをフランスたらしめているのは表面的なことだけではありません。人権、政教分離で世界の先進地。そんな顔を持っています。人権宣言があったのは1789年。現代の日本でも取り入れられている人権の基本的な方針がすでにこの時から作られていました。これは知らなかったのですが、フランスは政教分離が進んだ国だそうです。公的な分野で宗教色を排除することで、私的分野では信教の自由を保障しようという考えです。日本も一見、政教分離を実現しているように見えますが、実態はどうでしょうか。宗教観にはかなりしばられているような気もしますし、旧統一教会の一件からも宗教と政治について考えてみる必要がありそうです。

 ただ、フランスも理想的とばかりも言えません。イスラム教徒の移民が増え、「移民排斥」を主張する陣営が勢力を増しています。移民排斥がフランスの伝統を守ることなのか。人権を大切に考え、多くの移民を受け入れてきたフランスが揺れています。実は移民が多い日本も決して他人事ではありません。

アメリカは世界一か

 世界経済を牽引し、グーグルやアマゾン、フェイスブックなど巨大IT企業を次々生み出してきたアメリカは合理的な国のイメージですが、実は進化論を否定する人たちがいる「宗教国家」でもあります。妊娠中絶の権利が選挙の争点にもなる国。中絶を胎児に対する殺人と受け止める宗教保守派の勢力が強い「宗教国家」の一面があるためです。

 自由な国のイメージもありますが、黒人差別は一向になくなっていない気がします。テレビCMにさまざまな人種が登場するのはいいことのようですが、本当に必然性があってやっていることなのか。差別批判を避けるためだけではないのか。そんなふうに見えます。黒人差別の背景には、2045年には白人の人口が半数を割る見込みで、保守派の白人は多数派でなくなることを恐れている。そんな事情があるようです。

世界は日本と欧米だけではない

 欧州より先に日本で、発明したものがあれば、世界で初めては日本だと言い張る人がいます。でもそれって本当でしょうか。世界は日本と欧州、米国だけではありません。羅針盤、火薬、木版印刷、製紙がいずれも中国の発明だということはよく知られています。歴史を振り返れば、中国の世界初はきっと多いはずです。そして、これからは人口世界一でIT先進国のインド、急成長を遂げるグローバルサウスからも新しいものが生まれてくるでしょう。まあ、これからの国にはまだまだ解決しないといけない課題も多いですが。インドがIT先進国になれたのには、いまだに残るカースト制度もあるようです。生まれによって職業が制限される中、新しいITはその障害がない。誰でもチャンスがある。華やかに成功する人もいるけれど、階級制度に苦しんでいる人が残されている現実。日本だってまったく無縁の課題ではありませんが。

編集後記

 世界を知るには歴史、宗教を知らないといけない。この本を読んであらためて実感しました。正直、宗教は好きではないし、人類はそろそろ宗教から卒業すべきではないかとさえ思っているけれど、それを押し付けるのは違うとも思っています。それでは信仰の押しつけと同じになってしまうから。宗教に限らず、他の人が大事にしているのは何か。それに寄り添いながら物事を考える。今年はそんな大人を目指したいです。

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