ファンタジー小説3選

　投稿も１００回を超え、過去の投稿が埋もれています。これまで紹介した中で、テーマごとに選んだ作品を紹介する３選シリーズ。今回はファンタジー小説です。

十二国記

　十二の国家を、麒麟と呼ばれる霊獣によって選ばれた王が統治する異世界。描かれる物語は普遍的です。歴史の転換点において、与えられた立場ゆえに戸惑い、道に迷う王や麒麟。逆境の中でも、希望を胸にともして生きる官吏や名もなき民。異世界で生きる誰かの物語は、現実世界を生きる私たちの物語でもあります。

　今年シリーズ開始から30周年。これまでに九つのエピソード（上下巻、4巻構成のエピソードもある）と外伝的なエピソード０が刊行されています。エピソード１では、普通の女子高生が十二国に流され、冒険を繰り広げます。この中嶋陽子が王として成長する物語。そしてもう一つ、同じく日本で暮らしていた麒麟・泰麒の再生の物語。この大きな軸を中心に、さまざまな登場人物が絡み合って物語が展開します。

　本を手に取ったのは設定に引かれたのが大きかった気がします。国の命運がかかっていたり、剣を手に闘ったりと異世界ではあるのですが、そこでの葛藤は現実世界にリンクしたものばかり。そして、主人公がこれでもかというぐらい苦難に遭う。こっちの心が弱っていると読めないくらい辛い（けど読んでしまう）。国とはリーダーとは、生きるとは。大きなテーマを自分ごとにしてくれる作品です。

十二国記 (kumanokokorono-hon.com)

愚痴だけで何も変えられない方へ｜図南の翼 | 本の処方箋　熊野堂 (kumanokokorono-hon.com)

グイン・サーガ

　中原で3千年の歴史を誇る由緒正しき王国パロは、ある日突然、新興国モンゴールの奇襲を受け、一夜にして滅びる。王家の血をひくリンダとレムスの双子の姉弟は、ある力によって辺境の森に難を逃れる。だが、そこにも追手が迫り窮地に陥るが、突如現れた豹頭人身の怪人・グインが2人を救出する。グインは自身の名前と「アウラ」という言葉以外の記憶をなくしていたが、圧倒的な戦闘力と知略を持っていた。リンダとレムスが国を取り戻す旅、そしてグインが自身の記憶を取り戻す壮大な旅が始まる。世界一長い小説。本編１４７巻、外伝２６巻でまだ完結していません。

　単純に面白いファンタジーを読んでみたいとすでに30巻以上出ていた頃に読み始めました。グインは何者で、どこから来たのか。パロに眠る古代機器の秘密は。さまざまな謎を解き明かしながら、大陸各国の興亡が描かれていきます。長編だけあって、登場人物もめちゃくちゃ多い。展開によっては何巻もグインが出てこない。それでも、他に主人公を張れるキャラクターたちの活躍で物語は進んでいきます。僕は一介の傭兵からやがて王へと駆け上がるイシュトバーンがイチオシ。どんどん闇落ちしていくのが辛いですが。ハラハラ、ドキドキが楽しめる王道のヒロイック・ファンタジーです。

大長編に挑戦したい方へ｜グイン・サーガ | 本の処方箋　熊野堂 (kumanokokorono-hon.com)

大長編に挑戦したい方へ｜グイン・サーガ② | 本の処方箋　熊野堂 (kumanokokorono-hon.com)

大長編に挑戦したい方へ｜グイン・サーガ③ | 本の処方箋　熊野堂 (kumanokokorono-hon.com)

アルスラーン戦記

　大陸に精強な兵と華麗な文化を誇っていたパルス王国。西方の蛮族、ルシタニアの侵攻に対しても、その勝利を疑うものはなかった。だが、味方の裏切りにより罠にかかったパルス軍は、1日して壊滅。王都は陥落した。

　単騎生き残った王太子アルスラーンは、最強の騎士・ダリューン、軍師にして画家のナルサスらわずかな味方とともに故国の奪還を目指す。妖艶な美女、奇怪な魔導士、そして謎の銀仮面。中世ペルシアをモデルにした架空世界で多彩な人物が織りなす一大歴史絵巻。全１６巻（第1部7巻、第2部９巻）。

　読書から離れていた高校時代に再び本を手に取るきっかけになった作品です。もう圧倒的に面白くて、生きるために必要なエッセンスが詰まっています。主人公のアルスラーンが腕利きの剣士でも、切れ者の策略家でもないのがいい。わりと普通の少年なんだけれど、素直で誠実で、人を引き付ける力がある。国を取り戻すため、公正な政治をするため。有能な部下が続々とアルスラーンのもとに集ってきます。物語の中で語れる君主論は、現代社会のリーダーにも通じます。戦略論も政治論もそのまま今の社会に通じるものばかり。漫画版も出ているので、小説を読むのが億劫な人はそちらからチャレンジしてみては。

生き方を学びたい方へ｜アルスラーン戦記 | 本の処方箋　熊野堂 (kumanokokorono-hon.com)

生き方を学びたい方へ｜アルスラーン戦記② | 本の処方箋　熊野堂 (kumanokokorono-hon.com)

生き方を学びたい方へ｜アルスラーン戦記③ | 本の処方箋　熊野堂 (kumanokokorono-hon.com)