生き方を学びたい方へ|アルスラーン戦記

処方

アルスラーン戦記(田中芳樹)

効能・注意

・リーダー論が学べます

・多様な正義が学べます

・オカルトには負けません

こんな話

 大陸に精強な兵と華麗な文化を誇っていたパルス王国。西方の蛮族、ルシタニアの侵攻に対しても、その勝利を疑うものはなかった。だが、味方の裏切りにより罠にかかったパルス軍は、1日して壊滅。王都は陥落した。

 単騎生き残った王太子アルスラーンは、最強の騎士・ダリューン軍師にして画家のナルサスらわずかな味方とともに故国の奪還を目指す。妖艶な美女、奇怪な魔導士、そして謎の銀仮面。中世ペルシアをモデルにした架空世界で多彩な人物が織りなす一大歴史絵巻。

リーダー論

 主人公の王太子アルスラーンは物語スタート時、14歳。いきなり初陣でパルス軍が大敗し、ダリューンとともに再起を図ることになります。剣の腕も、知略も平均か平均よりやや上程度。もちろん、経験値は圧倒的に少ない。それでも、味方を引き付ける魅力があり、身分を問わずアルスラーンのもとには人材が集まってきます

 軍師ナルサスは、決して突出した能力のないアルスラーンを高く評価しています。「私たち部下は馬だ。殿下は馬を操る騎手だ。騎手が馬と同じ速さで走れる必要があるだろか」。なまじ腕に自信があると部下の進言を聞き入れなかったり、嫉妬したりすることもあります。自分で判断し、柔軟に取り入れることができる。アルスラーンは守られるだけの存在ではなく、騎手としての才能があったわけです。

 仕事においてもリーダーが、ITのスキルが高かったり、事務能力に優れていたりする必要はないはず。それは部下ができればいい。でも、何もできないリーダーには誰もついていかない。判断力や決断力、まとめる力など、何かは必要です。

 アルスラーンの成長物語でもあるこの作品には、たびたびリーダー論が出てきます。会社でも参考になるはずです。

多様な正義

 アルスラーンのパルスはペルシア、侵攻してきたルシタニアは十字軍をイメージしています。一方的に侵攻し、破壊のかぎりを尽くすルシタニア軍は、しかし自らの正義を信じ切っています(末端の兵士は)。しかし、ペルシア側から見れば多神教に理解を示そうとせず、文化の価値も分からない野蛮な悪でしかありません。

 混乱に乗じてインドやモンゴルをモデルにした国たちも、それぞれの正義のために動き出します。悪のように描かれる魔導士も自分たちの正義のために動いているのでしょう。

 「正義とは太陽の一つでなく、星のようなもの。互いに輝きを打ち消しあっている」。国も人も完全には分かり合えないけれど、正義が唯一絶対でないと理解できれば、互いに分かりかえる部分を探す努力ができるのではないでしょうか。

反オカルト

 作中には魔法も出てきます。強力な魔法もありますが、基本的には人間の知恵によって克服される対象です。物語を動かす予言、占いの類もそう。予言が当たるのは二つの場合に限られます。一つはまだ知られていない自然の法則を発見した場合。月の満ち欠けや天気なんかは、かつて予言だったのでしょう。もう一つは予言を信じた者が、実現させねばならないと実行する場合。これは現代でも起こりそうで怖いですね。

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