隋唐演義(編訳・田中芳樹)
こんな話
日本史で遣隋使、遣唐使を習ったのを覚えていますか?小野妹子が「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す」との手紙を届けたのが隋の最後の皇帝、煬帝。607年のことでした。物語は隋の文帝が陳を滅亡させるところから始まり、隋の滅亡、唐の天下統一、楊貴妃による騒動などが描かれます。クライマックスは隋末の反乱。日本では知られていない個性的な英雄が続々と登場。アウトローぶりを発揮して暴れまわります。
隋末の梁山泊
隋末の混乱期、水滸伝の梁山泊のようなアウトローが集う要塞がありました。超人的な強さの秦叔宝、強さはほどほどだけど何かと事態をかき回すトリックスター・程知節、若き軍師・李せきなど後に唐の天下統一を支える武将が漫画のような展開で続々と集まってきます。
英雄はほかにもたくさん出てくるのですが、僕が好きなのは李密。この要塞の首領で、アウトローをまとめ、一時は天下統一に最も近づきます。子供の頃から頭は切れるけれど、目つきが悪く、出世が閉ざされる。どんだけ目つきが悪かったのかと思いますが(笑)。目つきだけでなく、性格も悪いのですが、それでもアウトローたちと快進撃を見せる場面は痛快です。道半ばで敗れはしますが。李密が主人公の小説もあるくらいで、隠れた人気キャラなのかもしれません。あなたもぜひ、お気に入りの英雄を探してみてください。
歴代最高峰の皇帝
歴代の皇帝で誰が最も優れているかは、判断基準によって変わってきますが、常にその候補に入りそうな人材がこの時代にいました。唐の2代目、李世民です。彼は10代で父親を担いで兵を挙げ、20代で天下統一を成し遂げます。中国の長い歴史で、実力によって20代で天下を統一できたのは項羽と李世民だけ。項羽の楚は1代で滅びましたが、唐は300年近く続いています。しかも、李世民による治世、貞観の治は中国史上最も国内が治まった時代とも言われています。この物語でも主要な役割を果たします。
中国史に触れよう
中国の歴史は4千年とも5千年ともいわれますが、三国志はそのごく一部の時代。物語は圧倒的に面白いですが、その時代だけで満足してしまってはもったいない。中国史にはまだまだ面白い時代があります。人気の漫画「キングダム」は三国志よりさらに古い時代、春秋戦国時代を舞台にしています。キングダムのすぐ後の時代を描いた日本の名作が司馬遼太郎の「項羽と劉邦」。三国志と春秋戦国時代はいろんな作品が出ているので、詳しい人も多いかと思います。隋唐演義は三国志の時代から300年ほど後の世界です。
隋唐演義は突っ込みどころの多い作品ですが、三国志やキングダム以外の時代を知るきっかけとして非常に興味深い作品です。ドラマ化もされているので、そちらからチャレンジするのもいいかもしれません(小説以上に突っ込みどころが多いですが)。
日本史も人気があるのは戦国時代と幕末に偏ってますよね。今年の大河ドラマは「鎌倉殿の13人」。源平時代を描くのはかなりのチャレンジで応援したくなります。僕の住む和歌山県も源平ゆかりのスポットは多く、何かしら絡んでくるとうれしいなと思いながら見ています。