ゲーテ格言集(高橋健二 編訳)
偉大なる詩人であり作家であると同時に、最も人間的な魅力にあふれたゲーテは、無限に豊富な知と愛の言葉の宝庫を残している。彼の言葉がしばしば引用されるのも、そこには永久に新鮮な感性と深い知性と豊かな愛情とが、体験に裏づけられて溶けこんでいるからである。本書は、彼の全著作の中からと、警句、格言として独立に書かれたものの中から読者に親しみやすいものを収録した。(新潮社ホームページより)

「ゲーテはすべてを言った」を読んで、「ファウスト」を読むぞと思ったけれど、作者のインタビューで「いきなりファウストはやめとけ」とあり、お薦めしていた格言集を読みました。冒頭の方はちょっと時代を感じますが、人生論的なものは現代人にも通じるはず。刺さる言葉を求めている人にお薦め。
お薦め度
個人と社会
二つの平和な暴力がある。法律と礼儀作法とがそれだ。これまさにそう。強制力を持った時、特にやっかいなのは礼儀作法で、誰が何のために決めたのか分からないルールにしばれるのは、勘弁してもらいたい。ビジネスマナー的なものもそうで、本当にそうなのか?それって西洋の受け売りで、日本には合ってないんじゃないのとか思うものも多い。礼儀作法で人を見下す人は、本当に礼儀がなっていない(笑)
多数というものよりしゃくにさわるものはない。なぜなら、多数を構成しているものは、少数の有力な先進者のほかには、大勢順応のならず者と、同化される弱者と、自分の欲することさえ全然わからないでくっついて来る大衆とであるから。 これは現代でもそう。特に最後の全然わからないでくっついてい来る大衆もめちゃくちゃ考えている人も選挙で投票する際は同じ1票。これって本当に公平、公正なのか。
人生
結局、自己のうちに何を持っているか、他人から得るか、独力で活動するか、他人の力によって活動するか、というのはみな愚問だ。要は、大きな意欲を持ち、それを成就するだけの技能と根気を持つことだ。そのほかのことはどうでもいいのだ。 身も蓋もない人生論ですが、まさにそう。
生活はすべて次の二つから成り立っている。したいけれど。できない。できるけれど、したくない。 これも身もふたもないがまさにそう。家事も仕事の雑用もできるけど、したくない人が多いんですよね。
憂鬱
経験したことは理解したと、と思い込んでいる人がたくさんいる。 これは僕も含め、多くの人が陥る罠ですね。気を付けたいです。同じく、理解していないものは、所有しているとは言えない。 記事を書くときは気を付けている部分です。
生活をもてあそぶものは、決して正しいものにはなれない。自分に命令しない者は、いつになっても、しもべにとどまる。 自分を律しない人は多い。世の中にはしもべがあふれています。
時代差
いろいろ立派なことを言っているゲーテですが、1749年生まれ。現代とはやはり時代差を感じます。
女というものはその本分どおり早くから仕えることを習うがよいのです。仕えることによって、始めてやがて治めることが、また家の中で分相応の力を持つことができるようになるのです。女兄弟は早くから男兄弟に仕え、両親に仕えます。女の一生というものは、年じゅう絶え間なく行ったり来たり、あげたり運んだり、他人のために支度したり間に合わしたりするものです。
とても現代では言えそうにない言葉ですが、頷く人が多いのも現実です。
編集後記
いい言葉もあるけれど、格言集だけではやはりゲーテのすごさは伝わらない。ファウストを読むには聖書の知識があった方がいいらしいので、まずは少し勉強してから、ファウストにとりかかろうか。