理不尽さに押しつぶされそうな方へ|BE BLUES!

処方

BE BLUES!(田中モトユキ)

効能・注意

・前向きな主人公に感化されます。人生論としても学びがあります。

・W杯開催の年。サッカーの話題についていく基礎が学べます。

・読むとサッカーが上手くなった気分になりますが、実際はなっていません。

こんな話

 小6の一条龍は天才サッカー少年として才能を開花させ、全国に羽ばたこうとした矢先に友達をかばって事故に遭い、日常生活への復帰さえ難しいほどの大けがを負う。2年間のリハビリを終え、中2の途中でフィールドに復帰するが、かつてのボールタッチは失われていた。それでも持ち前の戦術眼、判断能力の高さなどを武器に、今できるプレーで再び日本代表を目指して走り始める。ライバルでもう1人の天才少年、桜庭巧もプロのジュニアユース(中学年代)に加入しながらも協調性のなさで伸び悩み、ユース(高校年代)への昇格を逃す。2人は同じ高校で再会。それぞれの課題に向かい、周りを巻き込みながら成長していく。サッカー漫画。

前向きさに感化

 龍の前向きさにはおじさんも感化されてしまいます。普通だったら小6から2年間も棒に振ればもうあきらめてしまうところです。せっかく復帰しても、かつてのライバルはずっと先に進み、自身はその辺にいる普通の上手い選手ぐらいのレベル。「もし、けがしなかったらって考えたりする?」という問いに主人公が「無駄だよそんなの。けがしちゃったんだから」と受け止め「ケガする前に描いていた道は歩けなくなったから、今新しい道を歩いている。目標は変えていない。きっとこの道でもたどりつけると思っている」。いい大人になっても、昔のことを持ち出して、「親のせいで、うまくいかない」「あの学校に行けなかったからダメなんだ」とウジウジしている人がいますが、そういう人にぜひ読んでもらいたいですね。

 「人生は短いようで長いんだ。誰が勝者になるかなど最後まで分からない。挫折で失うものがある。だが、這い上がることで新たに得る力もある」。龍は復帰後も次々壁にぶつかりますが、指導者の言葉通り、回を追うごとに新たな力が芽生えていきます。

理不尽さに対抗を

 作中の人物は主人公以外にもさまざまな理不尽を抱えています。僕もそうだし、みなさんだって、そうだと思います。世の中は理不尽なことだらけです。最近でいえばコロナ禍がそうですよね。商売ができなくなったり、スポーツや音楽ライブができなくなったり、普通の学校生活が失われたり。でも、嘆いているだけでは何も変わらない。愚直に向き合うしかない。「ピッチの中も外も世の中は理不尽が渦巻いている。理不尽に対抗しうるのは愚直さだと信じています」。指導者の言葉が響きます。

サッカーの見方

 

 サッカーは基本的に大量に点が入るスポーツではありません。得点シーンだけを期待していると、たいくつなゲームもあるかもしれません。でも、その前の段階。どうやって得点が生まれるか、どう失点を防いでいるかに注目すると、見方ががぜん変わってきます。

 作中では全くの初心者が登場して、サッカーを教わりながら観戦することで、サッカーの見方が示されます。例えば早いパス交換で、DFがボールに視線をやっている隙に、DFの視界から消えてフリーになるFW。両翼に広がって相手のDFを引き出し、中央のスペースを広げる両サイドの選手。一人の力でなく、チームでゴールを生み出す過程が見えてきます。

 僕もフットサルのチームに混ぜてもらうことがありますが、試合は観戦しているのとやってみるのでは大違い。なかなか思うようにプレーできません。トラップやキックなどの基本はもちろんですが、経験者でないと瞬時の状況判断が難しい。サッカー選手はその場で考えるというより、今まで培ってきた引き出しの中で、状況にあったものを選ぶ感覚に近いそうです。ちょっとした動き一つにも意味がある。この辺が分かると試合はもっと面白くなります。

 もちろん、個の力もサッカーも見どころ。桜庭が世界の名選手をモデルにした超絶のプレーで試合を一変させるシーンは圧巻です。

 「圧倒的な才能は、見れば理解できてしまう」。Jリーグで日本代表でそんなプレーが見てみたいですね。

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