結婚って何だろうと考えている方へ|スコーレ№4|

処方

スコーレ№4(宮下奈都)

効能・注意

・自分の人生は変えられます。

・結婚に対する重圧が軽減します。

・骨董品屋さんに行きたくなるかもしれません。

こんな話

 自由奔放な妹に比べ、自分は平凡だと思っている女の子・津川麻子。彼女が中学、高校、大学、就職を通して四つのスコーレ(学校)と出会い、少女から大人の女性へと変わっていく。その中で、彼女が遅まきながらやっと気づいた自分の一番大切なものとは何だったのか。一人の女性が悩み苦しみながらも成長する姿を描いた物語です。

 

転機となったスコーレは?

 

 「スコーレ」とはスクールの語源となったギリシャ語らしいです。物語では四つのスコーレを通じ、家族や恋愛、仕事、結婚が描かれています。人によって転機となったスコーレは異なると思います。あなたならどのスコーレでしょうか?

 麻子の学生時代はそれほどキラキラしていません。就職しても最初はうまくいかないのですが、やがて仕事や恋愛、結婚の考えが大きく変わっていきます。

 僕にとっても就職は大きな転機でした。今は地方新聞の記者ですが、最初に勤めた会社は製造業。めっちゃ不器用なのに工場でのライン作業でした。怒号が飛び交い、作業のノルマもかなりきつい。今までの知識や経験はほぼ役に立たない。身の程を嫌というほど思い知らされました。一方で、必死にくらいついてく中で、苦手な分野でもできることがあると実感しました。

 記者の仕事は毎日のように、少なくとも週に1日は初めての出来事、初めましての出会いがあります。未知の分野、苦手な人にも出会うわけですが、工場勤務を乗り越えてきた経験が支えとなっています。まあ、あの頃に戻りたくはないですけど(笑)

明治からの「家」制度

 作品とは直接関係ありませんが、最近の話題を一つ。法制審議会が結婚や離婚の時期によって生まれた子供の法律上の父親を決める「嫡出推定」を見直すよう答申しました。女性だけに課せられている再婚制限(離婚後100日間の再婚禁止)をなくすことも盛り込まれています。いずれも1898(明治31)年施行の民法に規定されたもの。「家」制度の名残を今も引きずっていて、個の利益や女性の権利は置き去りにされてきました。夫婦3組に1人が離婚すると言われる時代。「家」のあり方も変わっている中、ようやく一歩前進です。

結婚はすべきかどうか

 

 結婚していないと一人前にみられないような風潮がいまだにあり、重圧を感じている人は多いはず。僕も30代半ばまで独身だったので、それはいろいろ言われました。

 結婚に過大な期待をしている人もいます。結婚をゴールと表現する人もいます。結婚したらしたで、夫婦、家族関係は破綻しているのに必死で「形式」を守っている人もいます。

 麻子は結婚をこう考えていました。

 何でもよくできたという母が、結婚によって、ただの奥さん、おあかさんになってしまったと気づいた時から、私は結婚を疑い始めた。家政能力や育児を通してしか評価されないなら私たちは何のために学校に行くかのか―。

 それが最後にはこう変わります。

 結婚はしなくてもいい。だけど、してもいいのだ。これまでは結婚を小さく見ると同時に、大きくも見ていたと思う。…自分の人生を好きかどうか。大事なのはそっちです。うまくいった結婚って、うまくいった人生の一部だと思うから。

 いろいろ難しく考えすぎなくていいんですよね。むしろ、もっと素直な気持ちに従って行動すればいい。でも、それがかえって難しかったりするんですよね。

 

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