生きづらさを抱える方へ2|まじょのおとしもの

処方

まじょのおとしもの(作ふじのぶこ、絵aurinco)

効能・注意

・発見を大切に

・発達障害は障害か

・物語は身近に生まれる

こんな話

 主人公は保育園に通うしんちゃん。台風一過のある日、ママの運転する車の中から見た風景から豊かな発想力を広げたしんちゃん。そてつの葉っぱは魔女のほうき?、黒のカラーコーンは魔女の帽子?、黒のビニール袋は魔女のマント?しんちゃんが見つけたものは果たして何だったのか。その夜、不思議なできごとが起こる。紀南在住で子育てに奮闘する1児の母が描いた物語。絵本。

発見を大切に

 道に落ちていたソテツの葉を「まじょのほうきだよ」当時4歳の息子が「発見」したことが、物語のきっかけになったそうです。落ちていたもの、山の風景、空の雲に何かを発見して物語を膨らませる。誰しも子どものころにそんな体験があるはずです。大人が忘れてしまった気持ちや感覚、何事も純粋に受け止め、素直に言葉にする。子どもの豊かな感性と個性に大人は驚かされたり、感動させられたり。大人にこそいろいろな「再発見」がある物語です

発達障害

 発達障害という言葉がすっかり浸透しました。でも、本当の意味はよく知られていません。物語の主人公である作者の5歳の息子さんは自閉症スペクトグラムだそうです。

 学校に進むと、学校に適応できない子どもに「障害」のレッテルが貼られます。黙って授業を受けられない子は「障害」があるのか。コミュニケーションが苦手な子は「障害」があるのか。以前から不思議に思っていました。それって、子どもの「障害」でしょうか。子どもの方でなく、それを受け止め、対応できない学校や教育プログラムの「障害」、社会の「障害」ではないでしょうか。子どもだけでなく、社会人だってさまざまな社会の「障害」を感じているはず。一人一人はそのままに、社会や仕組みの方を変えていきたいですね。

物語は身近に生まれる

 作者夫婦は僕の知人です。息子さんは0歳の時に小児がんを経験したそうです。4歳の時に自閉症スペクトグラムの診断を受け、5歳の今も定期的に訓練を行っているそうです。得意と不得意がはっきりしているので、目標を定めやすいと話しています。物語は保育園に行くのを嫌がる我が子と日々闘っている体験から、「同じように日々向き合っているお母さんとお子さんに、ちょっとでも笑顔になってもらえたら」という思いから生まれたそうです。

 物語の最後に、魔女はしんちゃんにお守りをプレゼントします。子どもを支える家族や、周囲の人たちの愛情が形となって現れたものです。巻末では「この絵本が、同じ病気や、子育てで大変な思いをされている世界中のお父さん、お母さんの心の支えになることを願っています」とメッセージが添えられています。

 僕が20代のころ、シングルマザーの友人の子どもに読んでもらおうと書いた作品も関連でどうそ。

海はともだち(熊野堂自作) | 本の処方箋 熊野堂 (kumanokokorono-hon.com)

 

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