壁にぶつかっている方へ|アオアシ29

処方

アオアシ29(小林有吾)

効能・注意

・壁をつくらない条件

・人生の逆算

・感覚の大切さ

こんな話

 サッカーのJユースチームに所属するアシトは高校1年生。3日間のトップチーム練習参加を告げられる。ここで結果を出せば念願のプロへの道が開ける。意気込んで練習に臨んだアシトだったが、初日にプロと自分の差を痛感させられる。しかし、「足りなかったもの」に気づいたアシト.残り2日間で進化できるのか。新刊が出るたびに紹介するのもどうかとは思いましたが、あまりに作品のできがよく、サッカー以外にも通じる話が多かったので取り上げます。この漫画、かなりはまってます。

壁をつくらない条件

 チームを20年間支えてきたベテランの司馬は、多くの新人を指導してきました。その中にはチームで活躍するにとどまらず、日本代表、海外チームへと爆発的に飛躍していった選手もいます。プロになることが目標なら、プロでいることが当たり前の選手と壁ができるのは当然。積極的にアドバイスを求めてくる選手、アドバイスの意味を真剣に考える選手は成長していきます。その中で、爆発的に伸びる選手は、新人にもかかわらず自分の意見をぶつけてくるというのです。

 アシトは練習参加選手の中で一番下手。司馬が出すパスの意図も分かりませんでした。司馬のパスに反応できるようになり、臆することなく「もっとこうしたら」と自分の狙いも伝えられるようになっていきます。すると、司馬のパスがまた違って見えてきます。2日目に大きく成長して、3日目どうなるかというところで終わるのですが、続きが楽しみで仕方ない。

 これはスポーツ以外でも同じです。僕も司馬のような立場ではありませんが、歳はとっているので、新人に指導する機会はたびたびありました。伸びる人は決まって、助言の意図を理解しようとします。そして、違う場面で自分なりにアレンジしてくる。自分なりの意見も持っている。その逆は、なんでも人任せ。新しいことにチャレンジしない。

人生の逆算

 この作品のポイントは視野です。アシトは試合中に見える視野が広い。フィールド全体を上空から見ているかのようにプレーできるのが強みです。でも、視野が広い登場人物は他にもいます。自分の人生を逆算して、目標に取り組んでいる栗林や花です。高校2年ですでにトップチームを牽引する栗林はスペインでプレーすることを考え、そのために必要な努力をしています。それを知ったアシトは「人生という単位では視野が狭かった」ということに気づき、司馬のパスの意図にも思いがいきます。

 就職できればOK、給料がもらえればいい。そうした視野で働いている人と、こんな社会にしたい、こんな未来をつくりたいとビジョンを持って、その手段として仕事している人。社会人でもこの差は開く一方です。この辺は一般論として通じるなと感心しながら読みました。

感覚の大切さ

 

 アシトと同じく高校1年にしてプロの練習に参加している遊馬。これまで、ひょひょうと壁を乗り越えてきた異質の選手ですが、ここでは大きな壁にぶち当たります。他の選手はみなプレーを言語化し、共有して課題を乗り越えていきます。でも、遊馬は言語化は苦手で、自身の感覚を頼りに今まで際立ったプレーを見せてきました。「ここらが限界なのか」。悩む遊馬に、ドイツ移籍が決まったプロ選手が「今のままでいてほしい」と助言します。遊馬は得点が求められるFWです。「言語化はある意味、野生の感覚を切り売りして得るものなのかもしれない。本当にまれに、研ぎ澄ました感覚だけで生涯を貫くFWがいる」。この言葉で遊馬がどんなプレーを見せるか。これも次回以降の楽しみです。

 情報化社会の中、人の感覚は鈍っているのかもしれません。感覚でなく、言語化、数値化しないと理解できない。共有には言語化、数値化は必要ですが、すべてにそれがないとだめなのか。そんな問いかけがされている気がします。

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