書く力(池上彰、竹内政明)
こんな内容
分かりやすく切れ味のよい文章で知られる池上彰さんと「読売新聞の一面を下から読ませる」コラムニスト・竹内政明さんは、どのようにして文章を磨いてきたのか。テーマの決め方、構成方法、稚拙な表現からの脱出法などを披露。作文の魅力が分かり、どんどん文章が書きたくなる。学校でも会社でも書くことが求められるすべての人に届けたい実用書。
ユタカ式
小学校の同級生にユタカ君がいました(田舎なので中学も高校も同じです)。彼は子供の頃から勉強もスポーツもできて、今は大手企業に勤めています。ただ、そんな彼には弱点がありました。作文が苦手なのです。文集を見ると、苦手っぷりがはっきり分かる。今手元にありませんが、はっきり覚えています。修学旅行の文集。バスに乗って、奈良に行って大仏を見ました。そして、京都へ行って泊まりました。次の日は映画村に行って、大阪に移動しました…。とにかく、あったことを時系列に並べていく。僕たちはこれを「ユタカ式」と評していましたが、大人になってもこの「ユタカ式」文章に出会います。世の中には書くのが苦手な人が多い。だから、書店には文章術の本があふれているのでしょう。
まずはテーマ、そして削る
文章を書くとき、まずはテーマを決めます。でも、それだけではなかなかスラスラとは書けません。文章が苦手な人ほど、テーマ、中身、そして話の流れまで白紙の状態からすべてを同時に考えなくてはならなくなっていると、2人は指摘しています。とにかく「書くべき要素」を書き出してみましょう。全体の構成は、自分で書き出したその要素を眺めたり、何度も読み返したりしながら、全体の流れが通るようにしていくことを勧めています。
竹内さんはさらに「思いついた要素は『全部を使わなくてもいい』。むしろ、最初に自分の書いたものを半分にしてみる。それだけで文章がいきいきする。半分は誇張ですが、少なくとも三分の二に切ってみる」。これが文章を引き締めるコツのようです。
本来の意味
誤用されていた言葉が、世間で使われることで市民権を得ることがあります。「こだわる」は本来は良い意味では使わない言葉ですが。今はいい意味で使いますよね。新聞でも書家について記事で「書にこだわりのある人だった」と書いてしまう。固執してはいけないときに固執するのが「こだわり」の意味でしたが、今は「妥協しないで取り組む」の意味で使われています。こうなると、本来の意味で使う方が間違っているように見えてきます。
僕もこんなことを言われたことがあります。「B級グルメとは何か。グルメは本来、美食家、食通の意味のはずだ。君は人を食べるのか」。まあ、今はおいしい料理の意味がありますが、うかつに使えないですね。言葉のチョイスは本当に難しいです。