悔いのない人生を送りたい方へ2|ドライブ・マイ・カー

処方

ドライブ・マイ・カー(2021年、日本)

効能・注意

・不都合な真実を知りたいか問われます。

・村上春樹が苦手でも大丈夫と思われます。

・エンタメ性を求める人には長いかも(3時間)。

こんな話

 舞台俳優であり演出家の家福は、愛する妻・音との満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残したまま突然この世を去る。2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去を持つ寡黙なドライバーのみさきと出会う。さらに、かつて音から紹介された俳優・高槻とオーディションで再会する。

 喪失感と打ち明けられることのなかった秘密に苛まされてきた家福は、みさきとの車での時間を過ごす中で、それまで背を向けてきたあることに気付いていく。

不都合な真実は知るべきか

 「真実の姿はそれほど恐ろしくない。恐ろしいのは、真実を知らないこと」。劇中劇「ワーニャ叔父さん」のセリフがこの作品を表していると思います。同じセリフに触れながら、家福は臆病さのため、真実の扉を自ら開くことができずにいました。妻は真実を伝えようと決意したようでしたが、その前に亡くなってしまいます。

 以前、紹介した「春にして君を離れ」とテーマ的に類似性があります。不都合な真実を知るべきかどうか。冒頭のセリフに僕は共感できますが、「真実を知らない方が幸せ」という人ももちろんいます。どちらを選ぶかはその人次第。でも、知ることで失うものなんてない。新しい何かが始まるだけ。僕はそんな気がします。

 家福の気持ち、妻の気持ちどちらに近いか。どちらをずるい、優しいと見るか。男女間でも感覚は違ってきそうです

「聞かせる」物語

 妻の死によって扉は永遠に閉ざされたかのように見えましたが、死後も残る妻が吹き込んだセリフ自身が唱えるセリフ、劇中劇のセリフ登場人物の会話。「聞かせる」ことで物語は動いていきます。劇中劇には韓国、台湾、フィリピンから海外キャストも出演。多様な言語に加え、重要なシーンでは韓国語の手話も登場。派手さはないけど、見入って、いや聞き入ってしまいます。妻の名前が「音」なのも象徴的に思えます。

 もちろん、映像でも見せています。サーブ900という主人公の外車、この車に乗って移動することで映し出される景色、トンネルをいくつもくぐり抜けていく中で変化を表現するシーン。こちらも派手ではないですが、引き付けられます。

流行に乗るべきか、否か

 カンヌ国際映画祭脚本賞ほか4冠アカデミー賞国際長編映画賞など国際的に評価されている映画。日本人は海外の評価が大好きなので、劇場に足を運ぶ人も増えたと思います。しかし、この手の映画と相性がいいかどうかは自分に聞いてみてから判断した方がいい。繰り返しているように派手さはありませんし、丁寧に説明してくれるわけでもありません。僕は全く気になりませんでしたが、3時間という上映時間を苦痛に感じる人も少なからずいるはずです。

 僕も村上春樹ファンではないので、冒頭のピロトークシーンなど「出たよ村上春樹」と思って、ちょっと警戒してしまいました。が、作品は気に入っています。原作も読んでみようかなという気になりました。

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