眠れない夜に読みたい

マンガ、アニメ、映画

君は放課後インソムニア(オジロマコト)

不眠で悩む男子高校生・ガンタは同じ悩みを抱えるイサキと出合い、
放課後に学校の今は物置になっている天文台で、つかのまの眠りと、秘密を共有するという不思議な関係が始まる……

読めば明るく笑えて、そして彼らと一緒に心地よい眠りに誘われます。
そしてまっすぐに、男の子と女の子の、友達から恋愛への初々しさを描きます。

小学館コミックホームページより

インソムニアとは不眠症。日本人の4人に1人が睡眠障害を抱えているといいます。眠れない夜を経験したことのある思春期の少年少女、かつて少年少女だった大人に読んでほしい。初恋感にドキドキして眠れなくなっても責任は持てませんが。

お薦め度 

ポイント

・眠れない夜

・初恋

・天文部

眠れない夜

 眠れない夜を題材にした作品は多い。小説でも映画でも、悩みや人生の壁が題材となるからだ。そして、眠れない夜は程度の差こそあれ、きっと誰でも経験している。毎日ぐっすり眠って、朝はすっきりという人は、当たり前のようでいて、実はとても幸せだ。

 僕自身、思春期のころは悔しかったり、生きるのが怖かったりで眠れない夜を何度も経験した。眠りも浅い。今は年齢を重ねたからだろうか。寝つきはわりといいが、途中で覚醒してしまう。一晩中ぐっすり眠れる日は1年に何日もない。

 作中のガンタとイサキの不眠具合はもっと深刻だ。ガンタは父子家庭。子どものころ、寝ている間に母親がいなくなったことが不眠の要因のようだ。一方、イサキは幼少のころ大きい病気をしていて、体が弱かった。眠ると朝がこない感覚があったのだろう。

 眠れない夜があったからこそ通じ合えた2人。眠れない夜を抱えているのは自分だけではない。眠れない夜にだって意味を持たせることができる。そんな気持ちにさせてくれる青春物語。

初恋

 初恋を題材にした作品はもっと多い。文学の名作と言われるがツルゲーネフの「初恋」だが、僕の感覚では全然ダメ。初恋の淡さ、ドキドキ感がまるでない。主人公の少年の気持ちは確かに分かる。でも、少女をとりまくおっさんたちは、控えめにいって変態だ。初恋の物語にそぐわない。美少女に振り回されたいという男性の欲望は見事に描かれてはいるが。

 君は放課後インソムニアは、ガンタとイサキが急接近していく。田舎にある元祖母の家で2人きりで合宿しても、いけない行為には至らない。高校生の男女が2人きりでそんなことあるか、という意見もあろうが、ありうる。むしろ、すぐに行為に走らないのが主流ではないか。

 イサキはまあ美少女感があるが、ガンタは美男子という感じではない。しゃべりが上手なわけでもなく、自分をうまく表現できない。でも、イサキと信頼関係が深まっていく中で、本来秘めていた男前な心が表面に現れてくる。この少年の成長が心地よい。

 周囲の友人も癖はあるけれど、いい人ばかり。初恋と友情と、こんな高校生活を送っている人は良く眠れるんだろうな。うらやましいけれど、よくある中学生向けのドラマのようにキラキラしすぎていない。眠れない夜に心地よくなれるのは、この安心感のせいだろう。

天文部

 天文部がある高校がどれだけあるだろうか。僕も田舎に住んでいるので、都会に比べ、星はよく見える環境にある。小学生の時にハレー彗星ブームがあったし、聖闘士星矢の影響で星座や神話も少し学んだ。星座早見盤も車に積んでいる。

 作品の舞台は石川県七尾市。能登半島の中央部にある。周辺はきっと田舎だ。作品中に描かれる背景は、実際のまちを再現しており、聖地巡礼に訪れる人も多いという。

 昔のマンガなら、舞台は何となく東京だった。背景に東京タワーがあったり、渋谷駅があったりするわけでなくても、名無しの都市は何となく東京にあるんだろうなと感じていた。最近は地方を舞台にした作品が目立って増えた気がする。

 天文部は星の観察が主な活動なのだろうが、ガンタは休部していた天文部の存在感を発揮させるため天文写真のコンテストに挑戦する。この写真がまたきれいなのだ。石川県の名所を映しこみながら、星空を撮影する。天文写真は撮ったことがないが、作品を見ていると挑戦したくなる。

  

編集後記

 そこまで有名なマンガではないと思うが、アニメ化され、映画化もされた。残念ながらこの近くでは映画は上映しておらず、見逃した。それほど話題にもなっていないから、ヒットもしなかったのかもしれない。でも、そのくらいがちょうどいい。劇的な展開はないからこそ、染みる作品である。

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