アオアシ30(小林有吾)
プロサッカーチームのユースに所属する高校1年生のアシトは、トップチームの練習に初参加。3日間のうち、2日が終了した。ここまでアシトは、大ベテランの司馬のプレーに衝撃を受けながらも、爪痕を残すべく何とかくらいつき続けている。そして、いよいよ最終日。果たしてアシトは何を見せるのか。そして、この日をもって引退しようとしている司馬は、そんなアシトに何を見るのか。
コミックスより
今、壁にぶちあたっている方にお薦め。プロとアマはどう違うのか。いきなりプロで活躍するための要素は。熱いストーリーがさらに熱くなる。
お薦め度
こんな話
考える葦
この作品のテーマでも考える葦。それを体現するのが、大ベテランの司馬。考えて、考えて、考えて、するといろんなことがいずれ考えなくてもできるようになる。そうしたら、ようやくそれが自分のものになる。
司馬の場合、練習や試合で経験してきた膨大な数の場面、成功も失敗も蓄積され、それに似た場面が訪れるとどこに動けばいいか、どこにパスを出すべきか瞬時に判断できる。体の線が細く、足も遅いなどフィジカルに恵まれなかった若い頃の司馬はひたすら考える選手でした。何とかプロに呼ばれ、監督やコーチ、先輩から言われたことは?と思ってもやってみた。すると、ある時、考えなくても体が動くようになった。これがアシトの目指すべきスタイルでもあったのです。
これ、プロのスポーツ選手でなくても、すごく分かる気がします。新聞記者もいろんな現場に足を運び、さまざまな記事を読み漁って研究します。どんなに経験を積んでも、毎日新しいことが起きるので、全く同じシチュエーションというのはあまりない。それはサッカーも同じ。けれど、何がニュースか、どこにニュースがあるのか。感覚が磨かれていれば、似た場面と比べて、その時の最適解に近づける。現場に足を運ぶ、さまざまな記事を読み漁る。誰でもできるけど、ほとんどの人がやらないことを繰り返せるか。プロとアマの違いはサッカーも記者も似ていると感じます。
豪華対談
巻末に作者と日本代表としてW杯出場経験のある、元川崎フロンターレの中村憲剛さんの対談が収録されています。中村さんはアオアシの愛読者のようで、内容にもすごく詳しい。その上、29巻では海外に行ける実力はあるけれど、国内に残りJリーグで世界レベルのプレーを見せることで、リーグの発展に貢献した選手として登場しています。司馬のモデルにもなっているようです。中村さんもサッカー選手としては小柄で、フィジカルで勝負するタイプではありません。考えて、考えて、技術を磨きに磨いた選手で、僕も応援していた一人です。中村さんが僕が推しているキャラクター、大友を推しているのもうれしかったですね(笑)。周りがよく見えて、バランスを取りながら動ける。どんな組織にもほしい人材で、うちの会社にもほしいですね。
W杯の楽しみ方
W杯で日本代表は、ドイツ、スペインとかつてない強豪国と同一のグループになっています。中村さんも「日本の力を出し尽くしたとしても、勝てるかどうか分からない相手ばかり」と認めます。でも、今やろうとしていることがどれだけできるのか。どう勝つのか。その「どう」の部分はこだわって欲しいと話しています。「どう」の部分はどんな仕事にも通じる部分(新聞記者でも役所でも)ですが、あまりに軽んじている人が多いと日々感じています。
各紙で予想の布陣が紹介されていて、おそらく結構当たると思います。これは予想ではなく、こんな布陣なら面白いのにという願望です。攻撃的で、両サイドの守備は不安ですが、上田と久保、鎌田の攻撃を見てみたいです。
上田 久保
鎌田
三苫 守田 遠藤 伊東
板倉 富安 酒井
シュミット