ジョゼと虎と魚たち(2020年、日本アニメ映画)
こんな話
大学で海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコに生息する幻の魚を見るという夢を追いながら、バイトに勤しむ日々を送っていた。そんなある日、坂道を転げ落ちそうになっていた車いすの女性ジョゼ(本名はくみこ)を助ける。幼少時から車いすで生活していたジョゼは、ほとんど家の中で過ごしており、外の世界に強いあこがれを抱いていた。恒夫はジョゼと2人で暮らす祖母チヅから彼女の相手をするバイトを持ち掛けられ、引き受ける。口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たるが、そんなジョゼに恒夫は真っすぐにぶつかっていく。アニメ映画。
優しい気持ち
基本的に登場人物はいい人ばかり。その代表格が恒夫。夜中に祖母に連れ出してもらって散歩するぐらいしか外出機会のなかったジョゼが、恒夫と一緒に行動することで世界を広げていきます。ジョゼは24歳という設定の割には幼いですが、その表情が変わっていくシーンはほっこりさせられます。社会生活を送っていなかったので、友達もいなかったのですが、通っている図書館の司書と好きな小説がきっかけで友人になり、自分のやりたいことにしか興味がなかったのが、子供たちへの読み聞かせにまで挑戦。祖母の死を機に仕事についても考えていきます。
ジョゼがきっかけで恒夫が大けがをし、以前のように歩けなくなるかもしれないとなった時にはジョゼが恒夫との出会いをモチーフにした紙芝居を披露して、恒夫にエールを送る。このシーンはベタだけどなかなかいい。小学生から楽しめる作品になっています。
分かりやすさ優先
いい作品だと思いますが、一方で分かりやすさ優先にはなっています。ジョゼは小さい頃から歩くことができない設定ですが、こちらの方はそれほど掘り下げられない。前述の恒夫のケガで歩けないということはこういうことなんだというのは描かれるし、周囲の差別的な視線も少し出てくるのですが。前述の通り、基本いい人ばかり出てくるので、純愛ラブストーリーが中心です。原作や実写映画は見てはないのですが、この辺が違うようですね。
田辺聖子
原作は田辺聖子の短編小説。こっちも読んでみたくなりました。たまたまですが、今BSで田辺聖子の半生をモデルにした朝ドラ「芋たこなんきん」が再放送されています。ヒロインは藤山直美。こちらも見てはないのですが、面白そう。2006年の作品ですが、その前回作のヒロインが宮崎あおい、ギャップすごかったでしょうね。
もう一つ、ジョゼの名前のもととなったのは、フランスの小説家フランソワーズ・サガンの作品で、そちらも読んでみたくなりました。