田辺のたのしみ(甲斐みのり)
こんな内容
旅や雑貨、お菓子などを題材に30冊以上の本を執筆している文筆家、甲斐みのりさんが、和歌山県田辺市という一地域の魅力を紹介する。新鮮な魚料理とB級グルメ、甘く愛らしいお菓子、昔ながらの喫茶店やパン屋、穏やかな海岸、ゴロゴロと豊かに実るミカン畑や梅畑、南方熊楠ゆかりの旧居や神社。まち歩き目線で、昭和レトロなまちを行く紀行集。
甲斐みのりさんとは
甲斐さんがどのくらい有名人なのかは分かりませんが、おしゃれ系の女性の間では知名度が高いと感じます。テレビ番組「マツコの知らない世界」にも出演されたとか。そんな甲斐さんに何度かお会いして、お話もしました。静岡出身で東京在住。なのに年に数回は足を運ぶ「田辺ファン」。
今回の作品も出版社から「コロナ禍で取材に行けない中でも、これまでの蓄積で一冊書いてみませんか」と打診を受け、「田辺なら」と思い立ったとか。「和歌山県」全体なら、京都、神戸のようなメジャーな観光地なら一発OKだったかもしれませんが、「田辺」と関西でも決して有名でない地域で勝負するか。出版社も迷ったようですが、コロナ後の新しい旅の形としてプッシュすることになったようです。
朝昼晩のたのしみ
田辺には純喫茶が多い。それも純喫茶風ではなく、昭和からそのまま続く純喫茶。本格的なコーヒー、ティーソーダ―、個性的なモーニング、ボリュームたっぷりのランチが待っています。紹介されている中で、初心者でも入りやすいのが「サバ」。内装、調度品がクラシックホテルのラウンジのようです。店内の電話ボックスもクラシカル。ランチは良心的な価格でメニューも豊富な「グッピー」がお薦めです。
朝食やおやつに買いたいパンの店も充実。室井製パン所は、ほとんどが100円台のパンで、種類も豊富。味も袋のデザインもレトロで懐かしさを感じます。農家の人が繁忙期は大量に買って休憩時間に食べているのだとか。
夜は飲食街「味光路」。約200㍍×150㍍のエリアに200軒以上が並んでいます。まちの規模としては異常に多い。地元はもちろん、出張で訪れる人もいくつかなじみの店を持っています。特に和食、居酒屋系では新鮮な魚介が味わえると甲斐さんも絶賛。この店の料理を味わうために田辺を訪れるというひいきの店も紹介しています。
お土産
巻末にはお土産ガイドも。「デラックスケーキのはしっこ」は田辺の銘菓「デラックスケーキ」の端切れを袋詰めした隠れた人気商品。これを目当てに店を訪れる人もいます。僕が県外の友人によくお土産にしていたのが「ウツボの小明石煮」。海のギャングといわれるウツボ(凶暴なヘビみたいな生物)は栄養満点で、紀南地方では珍重されています。ご飯のお供にも、お酒のお供にも。田辺で居酒屋に行ったら刺身でも食べてみてください。南方熊楠顕彰館の手ぬぐいや扇子は、世界的な博物学者・南方熊楠のスケッチがデザインされ、お土産で渡すとセンスあると思ってもらえるかもしれません。