好きなことを追い続けた方へ｜ブルーピリオド

こんな話

　成績優秀で世渡り上手な高校2年生・矢口八虎は、悪友たちと遊びながら毎日を過ごしていた。充実しているように見えるのに、どこか虚しい。ある時、美術室で１枚の絵に心を奪われる。「絵は文字じゃない言語だから」。絵を通じて、初めて自分の気持ちを表現できた八虎は美術のおもしろさに目覚めていく。「第一志望は東京藝術大学」。実質倍率200倍の超難関に挑むアート系スポ根マンガ。

主人公がピュアすぎ

　主人公の八虎がとにかくピュア。こんな高校生いるのとか思うほど。でも、そういう人がアートの世界に向いているのかもしれません。全くのド素人から東京藝術大学という国内最難関を目指すことになった八虎は、まず親を説得するとこから始めないといけません。母にプレゼントした絵は台所に立つ姿。絵画を通じ、八虎は家族を支える母の思いに気づき、それを表現します。

　こんな息子ほしい。自分の高校時代とはまるで違いすぎると親目線で見てしまいました。

　芸大を目指すための予備校に進みますが、そこには個性的で、さまざまな葛藤を抱えている高校生、浪人生が集まりますが、みんな大人です。美術と向き合う心の動きの描き方が秀逸。美術は才能だけでなく、いろんな技術や工夫の積み重ねで生まれていることが実感できます。

美術の指導

　美術の指導って、公式や言語を教えるより難しい気がします。ですが、作中に登場する美術部の顧問、予備校の講師はとても魅力的で、主人公たちが前に進むのを後押しします。

　美術初心者でも藝大を目指せるのか悩む八虎に美術部顧問の掛けた言葉。合格できるかは分からないけれど「好きなことをする努力家は最強なんですよ」。今この瞬間に好きなことに打ち込む。誰でもできそうで、なかなかできないことをやり切るのがこの作品の魅力です。予備校講師もこう言います。「努力は運の幅を広げてくれるじゃないの」。美術の世界もスポ根です。

群青

　音楽ユニット「YOASOBI」が人気ですよね。僕も「群青」という曲が好きなのですが、これブルーピリオドから生まれていたんですね。全然知らないで聴いていて、ブルーピリオドをアニメで見たときに、「あれ、これまんま群青では」と衝撃を受けました。あらためて曲を聴くとブルーピリオドの世界をリアルに表現していました。「好きなことを続けること、それは楽しいだけじゃない」。学校でも部活でも、仕事でも。努力している人になら、誰でも当てはまるフレーズだと思います。