大人が楽しめる少年マンガを探している方へ|鋼の錬金術師

処方

鋼の錬金術師(荒川弘)

効能・注意

・伏線回収の妙味が楽しめます。

・キャラクターを追うだけでも楽しめます。

・手を合わせたら何か生み出せるのではと錯覚します。

こんな話

 19世紀のヨーロッパをモチーフにした架空の世界を舞台に、最愛の母を亡くした兄のエドワードと弟のアルフォンスの冒険と成長を描く。物語で重要な役割を果たすのが錬金術。兄弟は「亡き母にもう一度会いたい」と錬金術で禁忌とされている人体錬成を行って失敗し、エドワードは左足を、アルフォンスは全身を失う。エドワードは右腕を代償に、アルフォンスの魂を錬成して鎧に定着させる。兄弟は元の体に戻るという決意を抱いて旅に出るが、やがて国家を揺るがす争いの渦中に身を投じることになる。長編ダークファンタジーマンガ

錬金術

 物語に登場する錬金術はほとんど魔法。ただし、いくつかの制限があります。その基本は等価交換で、無から物質を作ったり、性質の違うものを作り出すことはできません。必ず原材料が必要で、その物質の構成元素や特性を理解し、分解、再構築するという流れがあります。

 これは物語の根底に流れる考えでもあります。「人は何かの犠牲なしに何も得ることなどできない」。エドは最年少で国家錬金術師になる天才ですが、アルは「兄さんも天才だと言われるけれど、努力という代価を払ったからこそ今の兄さんがあるんだ」と語ります。

 物語の最終盤、さらに兄弟は成長します。アルの言葉。「10もらったら自分の1を上乗せして11にして次の人へ渡す。小さいけど僕たちが辿りついた『等価交換を否定する新しい法則』です」。今の時代に響くセリフではないでしょうか。

重い想い

 登場人物がそれぞれ暗い過去を抱えていて、それが行動の起点になっています。さらに陣営がさまざまに分かれ、それが終盤に向かってつながっていく。主人公の兄弟も最初は軍のために活躍しますが、やがて戦うべき相手が変わっていき…。敵側にも敵側の理由があったり、かつての敵と手を組むことになったり、民族間の対立があったり。錬金術によるアクションを楽しむのもいいですが、登場人物の背景を思いながら読むと、深みが増します

 体制を変えるのは本当に難しい。学校でも会社でも。ましてや国ではなおさら。主人公の理解者で、国を変える理想を持つマスタング大佐のセリフ。「理想とかきれいごとというが、それを成し遂げた時それはただの可能な事に成り下がる。理想を語れなくなったら人間の進化は止まる」

実写映画化されますが

 鋼の錬金術師が実写映画化されるそうです。マンガの実写化は難しい。最近では「るろうに剣心」が比較的、上手くいった事例ですが、それでも物足りなさはありました。「ハガレン」は19世紀のヨーロッパをモチーフにした架空の世界が舞台で、日本人が演じるのか…。もう、不安しかないです。出演陣は主人公のエドにジャニーズの山田涼介、ヒロインは本田翼、僕のイチ押しマスタング大佐はディーンフジオカ、国を失い復讐に燃える人気キャラ・スカーは新田真剣佑、軍のトップ・ブラッドレイは舘ひろし予告映像自体はいい雰囲気ですが。何年か前にも実写化されていますが、見ていません。今回見るべきか、見ないでおくべきか。5月公開みたいなので、もう少し考えてみます。

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