それでも生きたい方へ|十二人の死にたい子どもたち

処方

十二人の死にたい子どもたち(冲方丁)

効能・注意

・10代の悩みに共感できます。

・大人の視点でも読んでみてください。

・ミステリーとしては物足りなさも。

こんな話

 廃病院に集まった12人の少年少女。彼らの目的は「安楽死」。全員一致で実行するはずだった。ところが、眠りにつくはずの病院のベッドには13人目の少年の死体が。秘密で集まったはずが、なぜここにいるのか?この中に偽者がいるのか。殺人犯が紛れているのか。「実行」を阻む問題に、12人が議論を重ねていく。互いの思いが交錯する中でどんな結論を出すのか…というミステリー小説。

ちょっと薄い

 主要人物が12人。最初は誰が誰か把握するのが難しいです。会話劇が始まると、一人一人の個性がはっきりしてきます。学校でいじめられている、親に命を狙われている、不治の病を抱えている。結構リアルな悩みもあって、共感できる人物も見つかるかもしれません。ただ、一人ひとりの人物はやはりちょっと薄い印象。なぜ13人目がいるのかの推理もそれなりに面白いですが、ミステリーと思って読むとちょっと物足りないかもしれません。

3月は自殺対策強化月間

 なぜ3月に自殺が多いのでしょうか。企業の決算期に当たるため、仕事上の問題や経済的な問題を抱える人が増えるから。就職や転勤、進学、引っ越しで生活環境が大きく変化し、ストレスを受けやすいからなど様々な要因が指摘されています。

 日本は世界的にみても自殺の多い国です。若者の自殺の割合も多いそうです。僕も若い頃はしんどい時期を過ごしました。幸い、自殺しようと思ったことはありませんが、割と身近に自殺している人もいて、決して他人事には思えません。少数派が生きにくい社会。多数派からちょっと距離をとってみませんか。同じ少数派で集まれればなおいい。無理に多数派の中で生きるより、少数派の中で新しいつながりをつくる。僕は無意識のうちにそうやって乗り切ってきただけかもしれません。

12人もの、+1人もの

 巻末の解説では「12人もの」として米国映画「十二人の怒れる男」三谷幸喜脚本の「12人の優しい日本人」を取り上げています。映画「12人の優しい日本人」は僕も見ましたが、裁判員裁判制度を(上映当時は)先取りしたコメディで、話し合いを進めていくうちに登場人物が立ち位置を変えていきます。確かに「死にたい子どもたち」の構造と同じです。

 僕はさらにもう一つの名作を思い出しました。萩尾望都の漫画「11人いる!」です。「死にたい子どもたち」は12人が13人に、「11人いる!」は、宇宙船内の密室劇で、10人で受験しているはずが、もう1人増えて11人になってしまったというお話。SF,ミステリー、学園ものといろんな要素が盛り込まれていて、時代を超えて楽しめる作品です。関連作品も、というか関連作品の方がお薦めなので、ぜひ観たり、読んだりしてみてくださいね。

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