マンネリを脱したい方へ|スキップ

処方

スキップ(北村薫)

効能・注意

・若さを失っていないかチェックできます。

・昭和と平成の違いを感じます。

・言葉の力を感じます。

こんな話

 昭和40年代初め。わたし一ノ瀬真理子は17歳、千葉の海の近くの女子高2年。それは9月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で1人レコードをかけ、目を閉じた。目覚めたのは桜木真理子42歳。夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。わたしは一体どうなってしまったのか。独りぼっちだーでも、わたしは進む。25年の時間をいきなりスキップしてしまった少女(中年女性)の軽やかな快進撃

逆タイムスリップ

 もし、今のスキルのまま20代や学生時代に戻れたら。そんな想像(妄想)をしてしまうことはありませんか。タイムスリップものでは、過去に戻って活躍する話が多くあります。もちろん、未来に行く話も多いのですが、スキップでは少々違います。17歳だったのが、目が覚めると42歳になっています。しかも、途中の記憶は一切ありません。鏡を見るのも嫌。全然知らないおじさんが、夫だというのも恐怖です。さらに国語教師として、自身が高校2年生だったはずなのに、3年生の授業をしなければならない。困難の連続ですが、くじけながらも顔を上げてスキップするように前に進む真理子に勇気をもらえます。

 夫も真理子に刺激を受けます。「(歳をとって心も)変わった自分を思い知らされる。成長とは別だ。何というか、気持ちは同じつもりでいても、時の波の間を泳いでいく間に、実は気持ちの向きが少しずれていく。自分ではそれと気付かないうちに」。47歳の僕もずれがないか見つめなおしてみます。

言葉の力

 桜木真理子は国語の教師。「言葉ができなかったら、いつか死ぬのだろうか、なんて苦しみも恐れも生まれなかったんでしょうね。…。それでも今、現に言葉があるというのはきっと、それだけの苦しみを支払っても、それが必要だっていうことなのよ」「人間って言葉のために死ねたりするでしょう。…そんな凄いものを、わたし達、日常で取り扱っているのよね」「好きな言葉がいくつも持てたらきっと、お金持ちになったみたいなものだと思うわよ」。言葉のない動物は人間のような争いはないかもしれないし、五感ももっと発達しているかもしれないけれど、やっぱり言葉は必要です。言葉がないと新聞記者も失業しますしね。

時代の違い

 「今、昭和何年?」と思わず聞いてしまうシーン。未だに、昭和(もしくは平成)に置き換えて年代を計算している人もいるのでは。

 真理子は25年経って、地方にもデパートのようなものが進出しているのに驚きます。都会のあちこちがはぎ取られて田舎に断片的に移植されるものなのだ、と。僕の地元も高校生の頃は大手のコンビニはなく、午後11時で閉まるローカルコンビニがあったくらいです。今は複数店舗が進出しています。大きな通り沿いは全国どこへ行ってもチェーン店が並んでいます。僕はそんな地方には全然魅力を感じませんが、ありがたがる人が多いのが現状です。ローカルな店が元気なまちづくりをしたいですね。

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