最強の読み方(池上彰・佐藤優)
こんな話
ジャーナリストの池上彰さんと作家の佐藤優さん。知の巨人と呼ばれる2人の「知の源泉」を知り、自分なりの技法を磨こうという実用書。「世の中を知るには新聞がベスト」でもどの新聞をどのように読めばいいか。どのサイトを見ればいいか。自分の興味、関心を広げる雑誌の活用術は。新聞、雑誌、ネット、書籍から「知識と教養」を身につける70の極意。
世の中を知るには新聞、理解を深めるには書籍
池上さんはまず新聞で日々のニュースの全体像を捉え、ニュースで気になるテーマがあれば書籍で深掘りしていく。書籍の中でも基礎知識を強化するなら教科書・学習参考書が有効だそうです。
ネットが普及して新聞が軽視されるようになりましたが、さまざまなジャンルのニュースをざっと短時間で俯瞰できる。一覧性で新聞に優るメディアはいまだに登場していません。新聞をとってない人も実は日々、「新聞の情報」自体は断片的に見聞きしているはずです。ニュースサイトの配信記事の多くは新聞発ですし、SNSや個人ブログでリンクを張られている情報もたどると第一次情報は新聞というケースが多い。テレビ局も新聞を読んで番組で取り上げることが普通に行われています。
池上さんは朝日、毎日、読売、日経、朝日小学生、毎日小学生の6紙を定期購読し、東京、産経を通勤途中に購入。地方紙にも目を通しているそうです。普通の人がこんなに読む必要はないし、時間もないでしょう。でも、1紙くらいは定期購読してみてはどうでしょう。僕の勤めている地方紙は月額1800円。1日換算なら100円もしない。そう考えるとめちゃくちゃコスパいいと思います。
記事の保管法
池上さんの記事の保管法がほとんど、僕と同じでした(読んでいる量は全然違いますが)。僕は朝日、毎日、読売、産経の4紙に毎朝目を通しています。ただし、時間がないのでざっと見出しを追って、気になる記事を少し読むくらい(最後まで読み切らないことがほとんど)。とりあえず、ページごとコピー(または切り取り)します。そして、夕方か週末にコピーした記事を読んで、やはり興味深いと思ったらジャンル別にクリアファイルに保管。そうでもないと思ったら廃棄します。
これを20年近く続けていますが、初期と比べると圧倒的に興味を持つジャンルが広がりました。仕事でも人生でも経験を重ねてきたからだと思います。職業体験の学生や新入社員の研修を任された時は「こうやって知識を蓄え、興味を広げているんだよ」と話しますが、「話を聞いて実践してます」と言われたことは一度もないですね…。
ある後輩からは「どうせ、2度と読み返すことないのに保管するなんて無駄」とまで言われましたが、そんなことはないです。たしかに、頻繁に見返すことないですが、保管作業をすることで、脳内の引き出しにニュースがしまわれれて、似たような場面に遭遇した時、何か判断に迷った時、その引き出しからニュースを引っ張り出して対処できるのです。
僕が新聞記者だからというのもありますが、どんな職業、立場の方でも有効だと思うのでちょっと試してみませんか。
ネットは万能には程遠い
佐藤さんはネットには特定のものだけが大きく見えたり、別のものが見えなくなったりする「プリズム効果」があると指摘しています。自分が知りたいことや自分の考えを補強する情報が欲しければ、いくらでも見つけられます。SNSは特にその傾向が顕著。関心のあることにはどんどん詳しくなりますが、それ以外はまるで知らないまま。どんどん視野が狭くなります。
紙の新聞や雑誌では、つい隣の記事まで読んでしまうこともあるし、書店に行けばお目当て本以外にも多くの本と出合うことがあります。我田引水的ではありますが、オールドメディアと呼ばれるものにも利点があるわけです。
あと、よくある誤解として池上さんが取り上げているのが「ネットの論調=社会の論調」という思い込み。こういう人は「メディアの報道に偏りがある」「真実を報道していない」と安易にマスコミ批判や陰暴論に走る傾向があります。メディアが報道しないのはほとんどの場合「裏がとれない」「確認がとれない」ことが理由です。報道の価値がないという場合もあります。必ずしも「マスコミ=正しい/ネット=誤り」ではありませんが、「ネット=正しい/マスコミ=誤り」でもない。そんなスタンスでものを見ることをお勧めします。