ゴールデンカムイ(野田サトル)
こんな話
明治時代末期の北海道・樺太を舞台にした、金塊をめぐるサバイバルバトル漫画。日露戦争終結後、元陸軍兵の杉元は病気の幼馴染のため、北海道で砂金を採っていたところ、アイヌが秘蔵していた金塊があると知る。窮地を救われて知り合ったアイヌの少女・アシリパとともに金塊探しに乗り出す。
ただし、金塊の隠し場所のヒントは脱獄した囚人たちに彫られた入れ墨。その「刺青人皮」は獣の皮のようにはがし、全て集めて暗号を解く必要がある。金塊を巡って陸軍の情報将校・鶴見中尉、実は生きていた元新選組の土方などさまざまな陣営が入り乱れ、時に敵対し、時に手を組みながらサバイバルを繰り広げます。
グルメ、狩猟
あらすじだけ見ると、アクション漫画ですが、北海道の食材を使ったアイヌ料理が多数登場するグルメ漫画でもあります。新鮮な肉や魚を刃物で叩いて細かく刻んだ、たたき肉料理「チタタプ」や汁もの料理、鹿の脳みそや目玉を食べるシーンも。アシリパが料理を紹介するが、アイヌになじみのない味噌に驚く場面も面白く描かれます。狩猟や野草の採取など、生命について考えさせてくれるのも物語の魅力です。
作中では食べ物への感謝を表すアイヌ語「ヒンナヒンナ」が頻繁に出てきます。北海道には一度だけ行ったことありますが、寿司もスープカレーもちょっとはずれ。今度はもっと美味い店みつけて「ヒンナヒンナ」と言ってみたいものです。
明治の人はタフ?
主人公の杉元は戦場で重傷を負っても驚異の回復力を見せ、戦線復帰することから「不死身の杉元」と呼ばれていました。ただ、作中に登場する人物はたびたび結構なけがをしますが、しぶとく生き延びる「不死身」が多い印象です。
個性的なキャラクターの中でも面白いのが脱獄王の異名を持つ白石。関節を外す能力や巧みな話術、観察眼を駆使して全国の監獄から脱出してきました。完全にギャグパートの人物で、凄惨な場面も多い作品が多くの人に受け入れられるのは彼の功績が大きいように感じます。
愛知県犬山市の明治村には明治時代の金沢監獄が再現されています。確か白石はここからも脱獄したはず。実際に見てみると作品の雰囲気がより味わえるかもしれません。
北海道の名づけ親を知ってますか?
以前、三重県松阪市を旅行中にたまたま立ち寄った「松浦武四郎」記念館。幕末から明治にかけての探検家です。蝦夷地を探査し、北加伊道(のちの北海道)という名前を考案したほか、アイヌ民族・アイヌ文化の研究・記録に努めた人です。北海道だけでなく、全国を巡っていてドラマ性のある人物。よっぽど熱心に資料を見ていると思ったのか、記念館の職員さんから「研究者の方ですか」と聞かれてしまいました。ついさっきまで、全然知らなかったのですが…。
ドラマ性がある人物と見込んだ人はテレビ業界にもいたようで、後に松本潤主演でドラマ化されましたが、こちらはあまり面白くありませんでした。でも、ゴールデンカムイがあるのもきっと松浦武四郎の功績の影響。もっといいドラマ誰か作ってくれないかな。