本格派ミステリーは好きですか?/十角館の殺人

ドラマ

十角館の殺人(2024年、日本 原作 綾辻行人)

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける。(講談社文庫ホームページより)

最近、ミステリーを読む機会がずいぶん減りましたが、読書に熱中するきっかけの一つがミステリー、(もう一つは)歴史ものでした。でも本格ミステリーとは少し距離をとっていましたが、ドラマならと見てみました。原作未読で見るか、原作を読んでから見るか。どっちがいいかはお好み次第です。

お薦め度 

ポイント

・本格ミステリーは好きですか?

・有名作家が勢ぞろい

・衝撃の一行とは

・ミステリーのドラマ化

本格ミステリーは好きですか?

 そもそも本格ミステリー、もしくは本格派推理小説とは何か。かっちりに定義はなさそうです。謎解きがメーンの推理小説、と言えば推理小説はだいたいそうだろうとなりますが、社会性や文学性はさておき、公正にヒントを見せながら謎解きを楽しむ小説なのかもしれません。

 僕が推理小説を読み始めたのは、シャーロックホームズシリーズや少年探偵団シリーズだったので、この系譜かと思います。連城三紀彦や初期の東野圭吾、北村薫ともかもこの流れかもしれません。そう思えば結構読んでいるかもですが、松本清張に代表されるような社会派ミステリーを読むようになり、「館」シリーズはいまだ未読です。どうも(東野圭吾が『名探偵の掟』で指摘したような)殺人事件のためだけのキャラ、舞台設定にどうも抵抗を感じるようになりました。

 でも、ドラマを見て、「本格ミステリー好き」と思いましたね(笑)。久々に謎解きを楽しんだ気分。

有名作家が勢ぞろい

 ミステリー研究会のメンバーは、推理作家の名前を付けて呼び合います。エラリー(クイン)、アガサ(クリスティー)、(ディクスン)カー、(エドガー・アラン)ポーコナン(ドイル)など。その時点でめっちゃ引いちゃう人もいるかと思いますが、僕はちょっとうらやましかった。この中に入りたいぐらいに。僕ならなんと名乗るか。江戸川乱歩から「ランポ」(ポーとかぶるか)、松本清張から「セイチョウ」か。この方式、名探偵「コナン」のキャラクター名にも生かされていますよね。ミステリー好きなら、なるほど、なるほどと思うのですが、そこにも実は仕掛けがあって、「やられた」と思いましたね。

 ちなみに地元の高校の生物部では、今はやっていないようですが好きな生物の名前を付けて呼び合っていたようです。ライオンとかリスとかそんな動物ではないですよ。ほとんどの人が知らない虫の名前だったと思いますが。作家の名前で呼び合うのもそのノリですね。

衝撃の一行

 物語は島に渡ったミステリー研究会のメンバーが連続殺人に遭遇しながら展開する謎解きと、島の外である本土で江南や島田が行う謎解きの二つの流れが同時に進行します。インターネットや携帯電話が発達していない時代。島と本土は完全に隔離されていて、互いに連絡はとれません。

 この作品は衝撃の一行が有名で、それをドラマでどう表現するかが焦点の一つとされていました。原作未読でもどの場面が衝撃の一行かは一目瞭然です。ところが、ネットを見ると「衝撃の一行ってどこのことですか」という衝撃の質問が投げかけられている。解釈は人それぞれで、衝撃を受ける人、受けない人はいるでしょうけれど、どこかは分かるでしょう?ほんまに読みました?と思いたくなる質問です。

 僕はキャラクターの配置的に、こいつが犯人だと目星はつきましたが、トリックまでは分かりませんでした。衝撃の一行の場面はまさに衝撃でした。ドラマにはいろいろ難がありますが、この場面の生かし方は成功していると思います。

ミステリーのドラマ化

 ミステリーのドラマ化はなかなか難しいと思います。原作ファンは謎解きの肝心な部分を知っているわけで、謎解きをどう盛り上げるかは苦心するはず。もっとも映像化した作品を見る大半の人はきっと原作未読なので、そこまで気をつかわなくてよいのかもしれませんが。

 ただ、未読の人が多いと、ドラマを見た後で果たして原作を読んでくれるのかという問題も生じます。マンガがアニメ化されると原作の売り上げがアップするし、小説が原作のドラマも公開されると原作が売れる傾向にあります。ミステリーの場合は果たしてどうか。僕は読んでみたくなったので、やっぱり原作買う人が増えるのかな。マンガ化もされていて、クオリティーが高いと評判なのでそちらも気になっています。

編集後記

 僕は子どもの頃、ミステリーにはまって、怪盗や探偵になりきって遊んでいました。そんな純粋(?)な物語の楽しみ方を思い出させてくれる作品です。ドラマの俳優はやや難がありました。その中で島田役の青木崇高は別格の存在感でした。もう少しいい俳優でできたらもっと面白かったのにとそこが残念です。「館」シリーズは次のドラマ化が決まっているようで、その辺改善してもらえれば。

 

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