ジェンダーやLGBTってどうなのかと思っている方へ/作りたい女と食べたい女

ドラマ・マンガ

作りたい女と食べたい女(2024年、日本)(原作・ゆざきさかおみ)

料理が大好きだが、ひとり暮らしで少食のため、もっとたくさん作りたいと日頃から感じていた野本さん(比嘉愛未)。同じマンションに住む、豪快な食べっぷりの女性・春日さん(西野恵未)との交流が始まり、2人で料理を作って食べることで関係を深めていく。いつしか野本さんは、自身がレズビアンで春日さんへの思いが“恋”だと気づき・・・。

NNHK公式ドラマページより

NHKの夜ドラ。1回15分。なんてことのない淡々とした描き方ですが、なかなかどうして、現代的な問題がいろいろ盛り込まれていて、楽しみながら考えさせられます。ジェンダーとかLGBTとかで悩んでいる人も、よく分からないという人も気軽に見てみては。

お薦め度 

ポイント

・ジェンダー

・LGBT

・結婚

・テロ

ジェンダー

 このタイトルを見ると、思い出すCMがあります。「私作る人、僕食べる人」。ハウス食品のテレビCM[のセリフで、性別役割分担の固定化につながると問題になりました。1975年の放送で、僕が生まれた年。つまり、直接は見ていないはずなのですが、この問題は記憶しています。ずっと取り上げられてきたからでしょう。

 ジェンダーとは生物学的な性別ではなく、社会的な性差。男性像、女性像みたいなことですね。女性が作って、男性は食べるだけみたいなのはおかしい。ただ、今でも女性の家事や育児負担が多い傾向はあります。この辺も難しくて、じゃあ半々にしなければならないのかというとそうではない。それはそれぞれのパートナー同士で決めればいいことで、千差万別。社会的に決められるのが問題なのであって「うちは夫が全てやります、妻がやります」でも全然OKなんです。

 物語の冒頭部分で、食堂に入った春日さんは定食のご飯が女性向けに少なめに盛られていることに違和感を感じます。自分はいっぱい食べたいのにと。店の方は女性に配慮したつもりで、それがぴったり合う人ももちろんいます。でも決めつけはよくない。逆に男性でも小食の人もいます。いろいろな社会的な問題が増える中でも、社会的性差はいまだになくならない問題ですね。

LGBT

 LGBTとはレズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(心身の性別不一致を感じる人)。物語は当初、LGBT要素はなかったのですが、やがて野本さんは意識し始めます(春日さんも)。

 LGBT、最近はLGBTQが性的少数者として一括りにされますが、これはなかなか乱暴なカテゴリーではないでしょうか。LGBまでは分かります。異性愛者と同性愛者、方向性が違うわけではありません。両性愛者であっても同じです。異性愛者同士であっても、誰もが付き合えるわけではないですし、同性愛者同士の出会いの方が少数である分、難しさはあるにしても、仕組みは同じです。

 Tはどうでしょうか。例えば生物学的には男性だけれど、心は女性という場合。この心は女性は何を指しているのでしょうか。スカートが履けることでしょうか。違いますよね。スカートは女性と決まっているわけではない。男性が履いてもいいんです。余計なものが付いている違和感でしょうか。Qは若い時にはそんな経験がある人もいるかもしれません。歳を重ねてもそうならとても悩むかもしれません。

 はっきりしているのは生物学的な性差だけで、気持ちの問題となるとどう考えていいのか。悩むところは多いです。でも苦しんでいる人は確実にいて、寄り添いたい。どうすれば近づけるのか。この議論はまだまだこれから。安易に決めつけないように注意したいです。

結婚

 結婚観は多様化しています。結婚のメリットは何でしょう。パートナーと一緒にいたいのなら、結婚しなくてもいれますし、別れる時も別れやすい。結婚する方が世間的に家族と認められやすいですが、そんなことはどうでもいい人もいます。

 メリットがあるとすれば法的な制度。相続であったり、借家権の承継、公営住宅への入居、離婚時の慰謝料請求、親権、所得税の配偶者控除、医療費控除の合算、遺族年金…など。愛情分野とはおよそ関係ない生活上のメリットですね。

 同性婚を認めない民法などの規定について札幌高裁は、「婚姻の自由」を定めた憲法24条などに反し、違憲だとする判断を示しました。同性婚を認める動きが加速しています。そもそも同性婚は、カップルにメリットがあり、かつ他の人が何らデメリットがありません。結婚制度を全面肯定するわけではないですが、結婚しないと不自由があるのが現状。異性であろうが、同性であろうが同じ権利が得られるのは当然ですよね。

 物語の中で、野本さんと春日さんは一緒に暮らすことになり、部屋を探すのですが、同性の友達というのではなかなか借りるのが難しい。ルームシェアと扱われてしまいます。すぐに別れて部屋を出ていく可能性を心配しているのでしょうが、別れる可能性は異性間であっても同じはずです。この描き方は現代ではまだリアルなんだろうなと感じます。

テロ

 物語はテロも扱っています。物騒なテロではありません。飯テロです。食べるのを我慢している人、もしくは食べられない人に対して、激しく食欲を沸き立てさせる振る舞いをすることですね。最近、深夜帯に飯テロと呼ばれるドラマが多いです。「孤独のグルメ」「絶メシロード」「深夜食堂」、そして「きのう何食べた?」。いずれも、おいしそうな料理が出てきたり、調理場面が丁寧だったり。「きのう何食べた」は男性同士のカップルが主人公で、この作品と対というかタイプ的には少し似ています。どちらも性的な描写はほぼないところが、BLものとの違いですかね。

この作品では最後にレシピも紹介されます。ホームページにも載っています。

編集後記

 朝ドラは毎朝見ていますが、夜ドラは週4日分、まとめて見ていました。この作品はなかなかの良作。すでにシリーズ2作目。原作未読なので、今後の続きがあるのか分かりませんが、登場人物も増え、面白さを増しています。「あるある」だったり、ふと疑問に感じることが描かれていて、さまざまな世代、性別の方に見てもらいたいです。

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