多様性の社会にならないのはなぜ?/否定しない習慣

実用書

否定しない習慣(林健太郎)

相手のことを否定しないー。褒めるよりも、肯定するよりも効果的な人間関係を劇的に変える方法です。部下、同僚、友人、恋人、家族、育児に効く。一番シンプルな心理的安全性の作り方。

本書カバーより

「否定」をやめるだけで9割うまくいく。いわゆる「〇〇が9割」シリーズ。否定の何が問題か、否定の起こるメカニズム的な紹介は非常に腑に落ちます。コミュニケーション術として、実用性は?と思う部分もありますが、職場や家庭の人間関係に問題のある人はご一読を。

お薦め度 

ポイント

・多様性を叫ぶほど増える否定

・否定のメカニズム

・言いなりにはならない

・これからの社会

多様性を叫ぶほど増える否定

 毎日のように耳にする「多様性」という言葉。異なる多くの人の集まりを指すのでしょうが、これがうまくいっていません。男女や国籍、民族をはじめ、LGBTQや移民、障害を持つ人など、マイノリティ…。互いに認め合うどころか分断が加速し、否定があふれてきています。多数が正しいというわけでも、少数が正しいというわけでもありません。すべてを受け入れることはできないけれど、ほんのちょっと重なりなら作ることができるのでは。否定しないことに、そのヒントがあるのではないかと読み始めました。

 

否定のメカニズム

 本書では「多くの人が否定している実感はない」としていますが、ありますね。もちろん、意地悪でしているという意識はないですが、否定している意識はあります。でも、これが問題なんですよね。

 否定ばかりされるとどうなるか。怒りが生まれる。オープンに話せなくなる。信頼関係が生まれなくなる。自己肯定感が低下し、自信を持てなくなる。ということは、否定しなくなればこれが逆転するというのが、この本の主張です。当たり前のようで、僕はこれを実践できていません。

 否定しないマインドをつくる基本的な考えは三つ。①「事実だから否定してもいい」という思考はしない、②「自分は正しい」という思考はしない、③「過剰な期待はしない」。これ、全部当てはまります。全部やっちゃってます。事実を伝えているだけは一番危ない。「言われた相手がどう感じるか?」を想像することこそが大切なのです。と本書は言います。そして、正しさ対決は決着が着きません。

言いなりにはならない

 では、全部言われたとおりに受け入れないといけないのか。組織の中で、100の意見が出て、全部を受け入れたら間違いなく破綻します。1対1の関係でも、全部受け入れていたらとてももたないでしょう。でも、意見の違い=否定ではないのです。意見の違いは理解したうえで、目的は共有すること。共有する目的を見つけることが大事なのです。

 また、否定しない=イエスではありません。相手がそう言っているという事実は承認するけれど、内容にまで同意するかどうかは別問題。ここで受け答えに有効なフレーズは「なるほど」だそうです。「なるほど」(笑)、僕もこれ使ってますね。これで何とかなるか自信はないですが、なるほどです(笑)。

 禁句には「わかる」を挙げています。これも「わかる」気がします(笑)。安易に「わかる」という人は多いですが、実際に分かっているケースはほとんどないですよね。せいぜい、「分かる気がする」程度にとどめておいた方がよさそうです。

これからの社会

 今年、「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産登録20周年を迎えます。これは結構特殊な世界遺産で、まずエリアが広い。紀伊山地には三つの霊場があります。「吉野・大峯」「熊野三山」「高野山」です。それぞれ、修験道、熊野信仰(神道)、真言密教という宗教の日本を代表する霊場です。異なる宗教が対立することなく、参詣道でゆるやかにつながっているのが大きな特徴です。熊野は男女や貴賤、信、不信も問わず、何人も受け入れる「寛容の精神」があるそうです。平安から鎌倉時代に流行した熊野詣は、令和の今また注目されています。20周年を機に熊野から「寛容の精神」を発信しようとしてます。それはいいことですが、肝心の熊野の社会は決して寛容性が高いわけではありません。精神の通り、多様性に寛容な社会であるなら、今のように人口減少が進んでいないでしょう。この精神を社会にどうつなげていくか。発信と同時に宿題を片付けないといけません。

編集後記

 キャンセルカルチャー、アメリカから流布した言葉が世界を覆っています。もともとは、多様性や公正を求めての活動のはず。ですが、従来の文化や伝統、習慣を否定し、消していく活動が過激化しています。多様性を求めて、統一性を目指す。そんな動きも出ています。生きにくい時代ですが、あきらめては何も変わりません。否定より、対話を。同一化より、共有・共感を。僕も心がけていきたいと思います。

 

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