地方にチャンスがあるって、本当か

実用書

地方でクリエイティブな仕事をする(笠原徹)

佐賀の小さな写真館「ハレノヒ」が伝えるクリエイターが幸せになる働き方。雇われフォトグラファーから独立し、フリーランスの将来を憂い、チャレンジと挫折の中でみつけたローカル起業のノウハウ。安い家賃、少ないライバル、快適通勤。チャンスは地方に落ちている。小さく始める開業&マーケティング術。

本書帯より

地方で働くのは不利と思い込んでいる人は多い。逆に地方なら楽勝だと安易に考えて移住してくる人も多い。地方で自分のやりたいことを貫くにはどうするか。起業でも、就職でも。クリエイティブでも、それほどでなくても。働き方の基本を見つめ直す教科書。

お薦め度 

ポイント

・自分主体で行動

・フリーランス50歳限界説

・労働からの脱却

自分主体で行動する

 地方に行ったからといって「あなたらしい仕事」がすぐにできるとは限らない。都会であっても、地方であっても、自らが行動していく「主体性」が最も重要と、当たり前だが忘れられがちな点を冒頭で指摘している。

 著者自身が職場への不満を抱えていたタイミングで、義父に誘われ新たな仕事に転身。カメラマンからカメラの修理工になった。ところが、誘われたからというだけの動機では職人の技術を習得することなど無理だった。ただし、この経験も糧になる。「過去が未来を変えるのではなく、未来が過去を変える」。仕事での挫折も、今ではその経験がよかったといえる。人生にはそんなことがある。ただ落ち込むだけの人には訪れない瞬間である。

フリーランス50歳限界説

 怖い説である。著者は高齢になるにつれて微妙な立場になっていくフリーランスの姿を見てきたという。腕は確かでも、発注元の担当者は異動や昇進で徐々に現場から遠ざかる。下の年代に現場の運営が移った時、果たして彼らは仕事をくれるか。「若い発注者にとって、年上への発注は気が引ける」という話はよく聞くし、若い人からするとセンスが古くても気を遣う。その上、ギャラも高め。

 私は会社員だが、フリーランス志向。早めにそっちに移りたい。だが、この50歳も迫っている。

 同い年の著者は企業からの依頼でなく、個人を直接お客さんとした写真館ビジネスを組み立てる。写真館でありながら、地域活性化をテーマにさまざまなサービスを展開し、写真業界では有名なそうだ。限界説を突破してできることはある。さまざまな活動が紹介されていて、勇気がもらえる。しかも、一つ一つ狙いや過程が解説されているので、応用できそうな気もする。

労働からの脱却

 いい写真やいい文章をつくっていれば、誰かが見てくれているというのは妄想でしかない。それはあなた個人の希望であって、広大な海に向かって石を投げているようなものだと。職人かたぎのクリエイターほど陥りそうな妄想である。

 クリエイターはただ「つくる」ことだけやればいいのではなく、大きな視野を持って客とその背景や未来を思いやり未来も含めて思いやり、心を込めてものをつくっていかなければならない。やらされて何かをつくったり、自分勝手な作品をつくることではない。著者の言葉は、クリエイターの本質をよく表している。

 「クリエイティブな仕事をする」とは、まず労働と思っている心からの脱却。

編集後記

 物書きは勤め人であれ、フリーであれ、文学的であってもなくても、クリエイティブでないとできない。でも、本当にこれがクリエイティブかと思うことはある。クリエイティブの本質を分かりやすく伝えてくれる良書。ビジネスの教科書にもぴったり。つながっておきたい人にデザイナーを挙げているが、これもさまざまなデザイナーと接してきた身からすると納得。

 

 

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