戦国武将、最強は誰か

実用書

スゴイ授業 戦国英雄編(探究学舎)

子どもたちにとっての最高の歴史の授業を作ろう」と制作されたのが、この「戦国英雄編」です。戦国時代の魅力的な武将たちのヒューマンドラマに焦点を当てて作られています。これまで約4千人以上の子どもたちが、教室やオンラインで「戦国英雄編」を受け、歴史好きが生まれてきました。本書は授業の様子を書籍にまとめたもの。そして、すべての学びの原点である「驚き」や「感動」を生み出すヒントを、読者のみなさまにお伝えします。

本書カバーより

歴史の面白さはそこに生きた人にある。テストには全く出てこないエピソードだけれど、歴史に興味を持つ要素が盛りだくさんの授業。歴史好きなのに、授業は全然面白くなった。つまらない授業のせいで歴史は苦手。そんな人にぜひ読んでもらいたい。

お薦め度 

ポイント

・地理×歴史

・戦国の嘘、本当

・戦国武将人気は

地理×歴史

 地理と歴史、別々の科目になっているが(今は違う?)この二つは関連性が強い。今流行りの地政学などがそうだ。戦国の覇王、悪魔とも恐れられた織田信長だが、家督を継いだ時点では領土は愛知県の一部のみ。それがわずか20年ほどで近畿、東海、甲信越と領土を拡大。天下統一と一気に近づく。これを地図で見ると、そのすごさが分かる。

 信長が快進撃を続けているのに、領土が真っ二つにされ、邪魔が入る。室町幕府の将軍、足利義昭が各地の武将に号令をかけ、包囲網を作ったためである。武田信玄の死もあり、包囲網を乗り切った信長だが、勢力図を見るとさらに包囲網が増えている。立ちはだかったのは上杉謙信。謙信の軍が圧倒的な兵力で攻めてくるも、清軍が途中で止まる。今度は謙信が病に倒れる。こうして危機を乗り切った信長は包囲網を切り崩していく。

 地図で勢力図を見ていくと、この動きがよく分かる。地理と歴史はセットで学びたい。

歴史の嘘、本当

 戦国時代で有名な戦いはいくつかあるが、名勝負といわれるのが川中島の戦い甲斐の虎・武田信玄と越後の龍・上杉謙信が何度も対戦して、決着がつかなかった。一番の激戦は4回目。兵力の多い武田軍が挟み撃ちの作戦を立てるものの、それを見破った上杉軍が裏をかいて、兵力を分散した武田軍の少数の方の部隊を襲う。武田軍の別動隊が合流できれば兵力に勝る武田軍の勝ち、それまでに信玄の首を取れれば上杉軍の勝ち。

 そこで謙信が取った策が「車懸かりの陣」。一隊が攻撃しては退き、また新たな一隊が攻撃する。これを繰り返して、味方は常に新しい隊を攻撃にぶつけ、敵を疲弊されるー。これは歴史書にも残る作戦で、本書でも紹介しているが、実際にはありえない。おそらく、まったく効果はない。新手、新手を繰り出すと言えば聞こえはいいが、実際は「遊んでいる部隊」が存在するということ。戦闘に携わっている部隊は敵軍の方が多くなり、小出しした部隊がことごとく負けて、数を減らしていくのはむしろ攻撃を仕掛けている方。そんな事態になりかねない。

 信長軍が武田軍を打ち破った長篠の戦いについては、本書では新説を紹介している。有名な鉄砲三段撃ちは歴史書には存在しない。戦局を左右したのはむしろ、川を使って敵の騎馬隊が乗り入れてくるのを防ぐ柵などをうまく使った陣地だっという。柵の資材を持ち込んできた描写は大河ドラマ「どうする家康」でも描かれた。

戦国武将、人気は

 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の戦国三英傑は教科書にも登場する有名人。たびたびドラマにもなっている。だが、教科書にもテストにも出てこないところに歴史の面白さはある。本書では遅れてきた英雄として真田幸村、伊達政宗を挙げている。真田幸村は強大な勢力になり豊臣家を一掃しようとした徳川家康に対抗した名将。大阪城の戦いで、家康をあと一歩まで追い詰めたとされる。戦い全体では負けており、歴史を動かしたわけではない。でも、人々の心をつかみ「日本一の兵」といわしめた。大河ドラマ「真田丸」では主人公になっている。

 領地を計る単位、石(こく)。1石は大人1人が1年間食べられる米があることを指す。政宗が目指したのは100万石の大名。19歳で家督を継ぐと、東北で勢力を拡大した。すると23歳で150万石を達成してしまう。周囲の勢力図など状況はまるで違うが、織田信長が23歳時点は50万石だったから、政宗のすごさが分かる。もっと早く生まれていたら天下を取れたというのも、大ぼらではない。でも、もしは教科書に載らないので、こうしたエピソードはテストにも出てこない。政宗もかつて「独眼竜政宗」で大河ドラマになっている。

編集後記

 武田信玄と上杉謙信、どっちが強いかなどの議論はテストにはまったく役立たないが、歴史に興味を持つきっかけとして最適の議論である。私も渋いドラマ「真田太平記」を見て、小さな真田家が巨大な徳川家に対抗する物語に引き込まれ、歴史全般が好きになった。子どもとわいわい言いながら読んでもらいたい一冊

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