傷ついても前に進みたい方へ|るろうに剣心

処方

るろうに剣心(和月伸宏)

 幕末に「人斬り抜刀斎」として恐れられた伝説の剣客、緋村剣心。維新の志士として戦ったが、明治維新後は「不殺」(ころさず)を誓い、流浪人として全国を旅していた。明治11年の東京で、剣道場の主神谷薫との出会いや、同じ激動の時代を生き抜いた宿敵たちとの戦いを通じて、贖罪の答えと新たな時代での生き方を模索していく。少年マンガ。アニメ化、実写映画化もされ、現在続編も連載されているようです(こちらは未読)。

維新の志士や新選組など幕末ものが好きな人にお薦め。明治から見るとまた違った魅力がある。実在の人物も多数登場。

お薦め度 

効能・注意

・時代設定が斬新

・キャラ設定も秀逸

・実写も意外にいける

時代設定が斬新

 人斬りが主人公なら幕末が舞台になりそうなのに、維新後の明治時代に設定しているのが斬新です。しかも、主人公は凄腕の剣士なのに「不殺」を誓っています。帯刀している日本刀も刃が逆になっていて、そのままではそもそも人は切れません。なぜ人斬りをやめたのか、明治の世に剣術で何ができるのか。自分たちが望んだ新しい時代は本当に人々に求められるものになっているのか。物語が進むほどに、さまざまな問いに悩む主人公。次々強敵が現れ、さまざまな技を駆使して戦っていく少年マンガのパターンは踏襲しながらも、主人公の設定、時代の設定から単純なチャンバラ劇に終わらない。新しい時代でうまく生きられない人、弱い立場の人に寄り添うストーリーが魅力です。過去の物語として幕末も描かれます。また、大久保利通や山県有朋、過去編では桂小五郎や高杉晋作ら志士も登場します。

キャラクター設定が秀逸

 敵味方とも多数のキャラクターが登場しますが、中でも設定が秀逸なのが斎藤一。元新選組3番隊組長で、明治の世では警察官になっています。新選組といえば、近藤や土方、沖田が有名ですが、剣の腕では沖田、永倉らとともに斎藤がトップクラスだったと言われています。作品でも剣心と互角に渡り合う達人。共闘して明治の世を守るのですが、もちろん「不殺」ではないし、残忍さもある。主人公は多彩な技を持っていますが、斎藤は「牙突」という突き技一本(バリエーションはある)。一つの技を絶対にまで高めることにこだわっています。剣術だけでなく心理戦、情報戦にも長け、正々堂々と戦うとは限らない。ただ「悪即斬」の信念にのも基づいて動く、組織にいながらも一匹狼。少年マンガらしからぬキャラクターですが、おそらく人気投票をすればかなり上位にくるはずです。この作品で登場してから、斎藤のお墓参りにくるファンが増えたというエピソードもあります。

 剣心の後を継いで人斬りになった志々雄と戦う京都編で、志々雄の部下である宇水との戦いは斎藤のベストシーンの一つ。「心眼」を持ち、動きが読める宇水に対し、心理戦と極めた剣術ですごみを発揮します。志々雄の基地から脱出するシーンでもいい味出しています。

実写も意外にいける

 マンガの実写化はコケるケースが多い。るろうに剣心もかなり心配の声がありましたが、意外にいけるというか、かなり雰囲気が出ています。キャラクターにコスプレ感がなく、佐藤健の剣心、江口洋介の斎藤、藤原竜也の志々雄など自然で存在感があります。

 特筆すべきは戦闘シーンのスピード感で、これまでの日本映画にはなかったもの。長編を短い時間に収めるため、ストーリー的に掘り下げが足りない部分もありますが、十分楽しめるレベルです。今度、和歌山県田辺市である弁慶映画祭で大友監督がゲストに来られ、映画の最終章(幕末編)も上映されます。エピソード的に、幕末の話はすごく好きです。映画版も雰囲気があります。ただ、これを経て、最終章に進むのが筋だと思うんですけどね。過去編が最終章になってしまったのはちょっと残念です。

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