SPY×FAMILY(遠藤達哉)
こんな話
物語の舞台は、冷戦状態の東国(オスタニア)と西国(ウエスタリス)。西国から東国に送り込まれた凄腕スパイ・黄昏(たそがれ)は、東西平和を脅かす東国の有力政治家に接触するため、彼の息子が通う名門校で懇親会に出席するという任務を命じられます。
任務の遂行に必要なので、黄昏は精神科医ロイド・フォージャーと名乗り、養子を求めて孤児院を訪れます。そこで出会ったのがアーニャという人の心を読むことができる少女。超能力でロイドの素性がスパイであることに気付き、ワクワクしながらロイドについていきます。
さらに学校の面接試験は両親の同伴が必要と分かり、急いで妻を探すことに。そんな折、ヨルという女性に出会います。超能力で彼女が殺し屋であることを知ったアーニャの策略もあって、ロイドとヨルは偽装結婚。利害が一致した3人による家族生活が始まるのでした。今話題のマンガ、アニメ。
ギャップ
今人気の話題作ということで、配信でアニメ版を視聴しました。なるほど。一見、シリアスな設定で絵柄もスタイリッシュなのに、基本コメディというギャップ。かなりキャラの立った3人が、それぞれが素性を知らないまま(アーニャは他の2人の素性を知っていますが)家族生活を続ける展開。1話完結方式ながら、任務遂行という大きな流れと、それぞれの抱える謎がいつ分かるのかというドキドキ。ジャンルでいうと少年漫画になるのでしょうが、大人も楽しめる良質のホームコメディーになっています。従来のスパイものとは違う、ジョーカー・ゲームとも違う魅力があります。
疑似家族
疑似家族好き。そんな言葉があるのかどうか分かりませんが、明らかに僕はそうみたい。過去に紹介した銀河英雄伝説のヤンとユリアンという15歳差の親子の関係、ALWAYS三丁目の夕日の茶川家の親子。血のつながりのない家族に対する憧れがあります。この作品では3人それぞれが別の思惑があって家族になったわけですが、アーニャのかわいさもあり、次第に家族らしくつながっていく。じんわりホッとする家族ドラマに癒されます。
まあ、うちも血縁関係のない家族が構成されていますが、僕はヤンでも茶川でもないし、子どもたちもユリアンではないので、こんなにほほえましくはないですけど。
伏線の数々
東西に分かれた国というのは、冷戦時代のドイツを思わせる設定です。そこで暗躍するスパイとなると悲劇的な展開になるはずが、幾重にもめぐらせた設定がスパイとファミリーを両立させています。原作を読んでいないので分かりませんが、解明されていない謎は多いです。西側に所属するロイドのスパイ組織と、東側にあるヨルの暗殺組織は本来敵対関係にあるはず。2人は互いの正体にまったく気付いていませんが、物語が進むにつれどこかで交差するはずです。そして、ある研究組織から逃げてきたアーニャ。彼女と同じ能力、または異なる超能力を持った子供が登場してもおかしくありません。シリアス、ミステリーの要素も散りばめられており、先が楽しみです。