大長編に挑戦したい方へ|グイン・サーガ②

処方

グイン・サーガ(栗本薫)

 物語の大きな魅力が多彩なキャラクター。膨大な人数の中から主要なお薦めキャラを紹介します。

イシュトヴァーン

 主人公を差し置いて紹介したいのが、残虐王、ゴーラの僭王、災いを呼ぶ男とも呼ばれる青年。登場時は抜け目のなく自信満々の陽気な傭兵で、グインとともに活躍します。リンダとの身分違いのロマンスも序盤を盛り上げる要素でした。産婆の占い師が言った「王になる」との予言を信じ、一介の傭兵の身から実現させる。なのに、いやだからなのか悲劇がつきまとう人物です。この闇落ちぶりが、ファンからすると見ていられない。前半とその後でキャラクターが全く異なります。

 孤児であった生い立ちからか、人から見捨てられることを極端に恐れ、さまざまな別れが彼の精神に影を落としていきます。純粋、単純な分、作戦上必要だったとはいえ、裏切った人々への自責の念もつもっていきます。闇から抜け出せるのか、彼の闇が中原をさらに戦乱へと導くのか。サーガの主人公の1人です。

グイン

 豹頭に2メートルを超える身長、雄大な肩幅、鍛え上げられた体格を誇る英雄。獣の頭だけれど知性は抜群で、人心の掌握術にも長ける。個人としての格闘も、軍を率いての指揮能力も一級品。傭兵から将軍、やがて王へ。出来すぎで嫌味なくらいです。唯一の弱点は、女性への恋愛態度でトラブルのもと。作中では結婚しているのですが、夫婦生活がうまくいっていません。

 物語が進む中で、彼がどうして豹頭なのか、どこから来たのか。「アウラ」とは何なのか。なぜ、突然森に現れたのか。さまざまな謎が分かってきます。既婚の彼が最終巻の「豹頭王の花嫁」をどう迎えるのか。さまざまな推理が飛び交っています。

ナリス

 たぐいまれなる美貌と知力に恵まれた青年。幼少期は不遇の時代を過ごすが、多方面に優れた才能を発揮し、宮廷の主人公になっていきます。それでも父母に疎まれ、最愛の弟も自分のもとを去り、深い孤独感を抱えています。人気のあるキャラクターですが、非人間的な計算高さや冷酷さを少なからず持っていて、その精神には深い闇がつきまとう。パロに伝わる古代機械のマスターとして、中原のカギ、物語のカギを握る人物です。

その他の人物

 パロの王子レムスは、物語登場時、活発な姉リンダに比べ、気弱さが目立つけれど優しい少年でした。途中覚醒する様子を見せるのですが、いろいろあってそうはいかず悲劇的な展開に。名誉を挽回する機会はあるのか。なさそうですが。

 マリウスは、ナリスの弟。母の身分の低さから宮廷で軽んじられ、堅苦しい宮廷生活になじめないこともあって、愛する歌と自由を求め吟遊詩人となります。いろいろな能力はそれなりに高いのですが、責任を負うのが嫌いで、すぐに逃げ出す。愛すべき困ったキャラクターです。

 有能な魔導士にして、計算高い官僚、そして人間味あふれるヴァレリウスマリウスの妻となる元男装の剣士オクタヴィアは、実は大国の皇女。イシュトヴァーンの父親代わり、海の男カメロン世界三大魔導士の一人で物語をかき回すグラチウスなど、個性的なキャラクターが多くきっとお気に入りが見つかるはずです。

 

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