ヤン・ウェンリーを知ろう
どんな人物
同盟側の主人公。ラインハルトと並ぶ作中屈指の軍事の天才で、士官学校を卒業したばかりの21歳の時に任地のエル・ファシルで活躍したことで「エル・ファシルの英雄」、その後、難攻不落の要塞を味方の犠牲を一人も出さずに攻略したため「魔術師ヤン」と呼称される。本人は軍人が嫌いで、歴史家を志していた。普段の生活は怠惰で、軍人らしさはかけらもない。誰よりも同盟の民主政治が腐敗していることを知っているけれど、それでも自らを正すことのできる民主政治を信じて、帝国と戦い続ける。さまざまな矛盾を抱えた存在。僕が最も影響を受けた架空の人物です。
古今東西の戦争に共通して言えること。「人間の社会には思想の潮流が二つある。生命以上の価値が存在するという説と、生命に優るものはないという説だ。人は戦いを始めるとき前者を口実にし、戦いをやめるとき後者を理由にする。それを何百年、何千年も続けてきた」「戦争の90%までは、後世の人々があきれるような愚かな理由で起こった。残る10%は、当時の人々でさえあきれるような、より愚かな理由で起こった」。すごい説得力。
「恒久の平和なんて人類の歴史上なかった。だから、そんなものを望みはしない。だが何十年かの平和で豊かな時代は存在できた。吾々が次の世代に何か遺産を託さなくてはならないとするなら、やはり平和が一番だ。たかがこの先何十年かの平和でも、その十分の一の戦乱に勝ること幾万倍だと思う」
そして、名将と呼ばれる自身の存在もこう見ています。「本来、名将と愚将との間に道義上の優劣はない。愚将が味方を100万人殺すとき、名将は敵を100万人殺す」。
準備の大切さを教えてくれます。「戦わずに降伏させることを考えてみよう。その方が第一、楽だ」「ところが、世の中の半分以上は、兵士を多く死なせる司令官ほど苦労をしていると考えるのさ」。
新聞が世の中に欠かせない理由。「ペンは何百年も前の独裁者や何千年も前の暴君を告発することができる。剣をたずさえて歴史の流れを遡行することはできないが、ペンならそれができるんだ」。
こうなりがちです。「自分が善であり、対立者が悪だとみなしたとき、そこには協調も思いやりも生まれない。自分を優越化し、相手を敗北させ支配しようという欲望が正当化されるだけだ」
だから気を付けたい。「言葉で伝わらないものが確かにある。だけど、それは言葉を使い尽くした人だけが言えることだ」
信念を振りかざす人には注意したい。「信念とは、あやまちや愚行を正当化するための化粧にすぎない。化粧が厚いほど、その下の顔はみにくい」
「かかっているのは、たかだか国家の存亡だ。個人の自由と権利に比べれば、たいした価値のあるものじゃない」。「政治の腐敗とは、政治家が賄賂をとることじゃない。それは個人の腐敗であるにすぎない。政治家が賄賂をとってもそれを批判することができない状態を、政治の腐敗というんだ」
取り上げていったらきりがないですね。日常的に心掛けているのはこれ。「夕食の用意が出来てもいないのに明日の朝食について論じても始まらない」。先々の心配ばかりするより、目前に急務があるのだから、まずはそれを片付けよう。