ニュースのなぜ?は世界史に学べ(茂木誠)
こんな内容
ニュース番組や新聞を何となく見ているだけでは、ニュースの「本質」をつかむことはできません。国際ニュースを見て疑問に思うであろう100のポイントを取り上げ、世界史と絡めて解説しています。歴史の成り立ちから学ぶことで、国際ニュースの本質を読み解く。その一部を紹介します。
なぜ紛争は起きるのか
ロシア軍のウクライナ侵攻のニュースを見て、思い出したのがこの本でした。もう5年以上前に読んだ本ですが、たしかウクライナのことに触れていたはず。本を開いて驚きました。100項目の一つ目が「ウクライナ紛争の原因は何か?」。すっかり忘れていました。この本が出る少し前、ウクライナの南部に位置するクリミア半島をロシアが領土として編入していたためです。ウクライナ東部を飛行していたマレーシア航空の旅客機が撃墜される大事件も起きています。
ウクライナでなぜ紛争が起きるのか。最大の要因は位置です。世界の歴史を振り返ると、主な紛争は異なる文明圏の「境目」で起きています。例えば、欧米の「キリスト教」とアラブの「イスラム」が接する境目は紛争が繰り返されていますよね。インドとパキスタンも「インド(ヒンドゥー)」と「イスラム」の文明のぶつかり合い。ウクライナは「西ヨーロッパ」と「ロシア」文明の境目に位置しています。
ロシアとウクライナ
ロシア人とウクライナ人はもともと兄弟みたいな民族です。仲たがいのきっかけは遠くさかのぼります。モンゴルが鎌倉時代に攻めてきた「元寇」は教科書にも出てきますよね。この頃、モンゴルはウクライナ、ロシアまで侵攻して200年近く支配します。その後、モンゴルの支配を脱した後、モンゴルの影響を受けたロシアとポーランドの影響を受けたウクライナで歩む道が変わってきたとのことです。
ロシアがウクライナにこだわるのは二つの理由があるとされています。一つは豊かな穀倉地帯、もう一つは黒海への出口という地政学的な理由です。ロシアにとって南側からの脅威に対する防波堤としてクリミア半島は重要な位置にあります。一方、ロシアを弱体化させたいアメリカは、にらみを利かせるためウクライナが欠かせない。これだけでも対立の構図が深まります。ヨーロッパもそれぞれ事情を抱え、特にロシアにエネルギーを依存している国々は、弱腰です。「世界史に学べ」では、こうした各国の思惑が歴史とともに解説されています。
日本はどうか
ガソリンの高騰が続いていますが、ロシアは世界でもトップクラスの原油産出国。直接、ロシアから原油を購入していなくても、日本を含め世界の原油価格に影響が出るでしょう。
ロシアとウクライナは世界有数の麦類生産地です。小麦の価格に影響が出ることも避けられません。
日本が日本のことだけ考えて済む時代はずいぶん前に終わっています。世界の紛争をどうやって止めるのか。島国だけれど、逆に海を通じて世界とつながっている日本が平和のために果たす役割は何か。この本はそんなことを考えるきっかけになるかもしれません。