吾輩ハ苦手デアル(原田宗典)
こんな話
スポーツ万能で頭脳明晰、品行方正で容姿端麗。おまけに金持ちで、とにかくもてる。そんな人は滅多にいません。人間一つや二つ不得手があって当たり前。苦手なものが多いという作者が、自身の苦手なものをがっくり腰砕けのエピソードとともに紹介する面白エッセー。
苦手なものは何ですか?
あなたの苦手なものは何ですか?作品に登場する苦手は、嘘、飛行機、面接、寿司屋、お土産、お洒落、床屋、歯医者など。なるほど、私もそうだと思うものから、「なんでそれが苦手なの」と思うものまで様々です。
嘘というのは共感できる人も多いのでは。嘘はつかれるのも苦手ですが、つくのも難しい。嘘をついてもボロが出て、ボロの中から新たなボロがでる。もうボロボロになるしかないという経験はありませんか。
原田氏も会社員時代に寝坊した際、家では「目覚まし時計が悪い」と結論を下したものの、会社にそんな報告ができるはずもなく、定番の「風邪」を使います。ところが、「体調が悪くて」と電話すると、電話先の上司の対応が不機嫌そうに感じる。そこでさらに嘘を強調していくうち、三谷幸喜のコメディのようにどんどん泥沼化していきます。思い出して冷や汗をかいている人いませんか。
床屋は苦手
僕も共通するのは床屋ですね。お洒落とは縁遠いビジュアル、体質なので、「どうされますか?」とか聞かれると恥ずかしくて何も言えない。「いや、あなたプロなんだから、一番いいと思った風にやってよ」と思ってしまいます。なので、散髪は面識のある美容師の店にしか基本行きません。何度か転勤しましたが、その先でたまたま同級生が美容師をしていて、もうその店一択。今も15年くらい通っている美容室があり、そこではイスに座ったらすべてお任せで、カットしてくれます。
外食も苦手
外食が苦手です。さすがに、最近は慣れてきましたが、一人で外食するのは今も苦手です。散髪と同様、店主が顔なじみなら大丈夫なのですが。実家は控えめにいってあまり裕福でなく、子どもの頃、ほとんど外食の経験がないことが影響していると思われます。どの店を選べばいいのか、何を頼めばいいのか。緊張してしまう。
大学受験の際、ホテルに泊まる必要があり、夕食の店を探すのも面倒なので、ホテル内のレストランを予約しました。もちろん、高級なホテルのはずもなく、ハンバーグセットみたいなのが出るのかと思ったら、メニューは簡単なコース一択。テーブルにスプーンやフォークが並んでいるのですが、当時の僕はどれをどの料理に使うか全く分からず固まってしまいました。
最初にスープが出てきたのですが、並んでいるスプーンを見て、どれがスープに適しているか吟味。「これだ」と思った真ん中のスプーンを使い、元の場所に戻しました。すると、ウエイターさんが当然のように未使用の端のスプーンを下げていく。なるほど、そういう仕組みね、と後からは思いましたが、その時は「ぎえー、大失敗した」と落ち込みました。そのせいかどうか、受験にも失敗しましたね。今でも外食はちょっとドキドキしてしまいます。