政治を変えたい方へ|17才の帝国

処方

17才の帝国(2022年、日本)

効能・注意

・近未来の設定にリアリティーを感じます。

・政治に関心のない人も入りやすい。参院選前に見ておきたい。

・青春もの、サスペンスとしても楽しめます。

こんな話

 舞台は202X年。日本は深い閉塞感に包まれていた。出口のない状況を打破するため、総理・鷲田は通称UA(ウーア)プロジェクトを立ち上げる。全国からリーダーをAIで選抜し、衰退した都市の統治を担わせる実験である。AIが首相に選んだのは17歳の少年、真木。他のメンバーも20才前後の若者だった。経験の無さは膨大なデータを持つAIがサポート。真木は仲間とともにAIを駆使した改革を進め、衰退する地方都市を実験都市ウーアとして生まれ変わらせていくー。

リアリティー満載

 テレビドラマはあまり見ない方ですが、これにはハマりました。近未来という設定ですが、202X年って、もう10年も先ではないということ。日本のGDPは戦後最大に落ち込みG7からも除外され、失業率は10%を超えています。世界から「経済の日没 サンセット・ジャパン」と呼ばれているというのもあり得る。衰退する地方都市も世代間で異なる意識も、全国どこにでもある風景です。ヒロインの家庭は父親が失業、祖父は介護が必要で、弟は不登校。これも決して特殊な状況ではありません。こうしたリアルな現実をどう変革するか。興味深く視聴しました。政治ものだけでなく、青春もの、サスペンスものとしての要素も絡み、最後まで飽きさせません。NHKで先日放送が終了しましたが、再放送や配信でぜひ。

いきなり市議会廃止

 3機のスーパーコンピュータによるAIのソロン。タイプの異なる3台があることで、判断の偏りが防げるという仕組み。ウーアの「国民」は眼鏡型のデバイスで、政治の動き、まちのデータなどが見られます。国民の声を届けることも可能です。真木総理が最初に打ち出したのが、市議会の廃止。この提案にソロンは、国民の幸福度が上がると判定します。国民もこれを支持します。そんなことをしたら、国民の声が政治に届かなくなる。そんな心配はありません。全員がソロンを通じ、意思を表明できるからです。一部の議員とつながりのある人の声しか反映されなかった政治より民主的になるかもしれない。そうした設定が描かれます。テクノロジーを使った直接民主主義への回帰です。もちろん、このままでは課題がありますが、切り口としては非常に面白いと感じました。

俳優陣もいい

 内閣官房副長官で主人公たちの補佐役を務める平は星野源。クールなようでいて、うちに秘めている熱い思い。経験を積むほど臆病になり奥底にしまってしまっていたものが、若者たちと接するうちにわき上がってくる。その変化を繊細に演じています。総理の孫で、大人と若者の間に立つ若手大臣役を演じる染谷将太の苦悩と成長も印象的でした。

 この人はすでに有名なのかどうか分かりませんが、目を引いたのが若手大臣の一人、河合優実。存在感があって、これからドラマや映画に出演が増えそうです。いずれ国際映画賞などに絡んできそうな雰囲気があります。

 主人公の真木を演じる神尾楓珠とヒロインのサチを演じる山田杏奈は、今売り出し中の若手俳優です。 

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