誤解だらけの沖縄基地(沖縄タイムス社編集局)
こんな内容
沖縄にはあまりにも多くの米軍基地が集中している。たったそれだけのことが、戦後75年以上経っていまだに解決できていない。それこそが沖縄問題の本質である。多くの国民が目を背け、「沖縄に基地があるのは仕方ない」という雰囲気を作り、責任から逃れようとしているのではないか。沖縄の地元紙が「事実誤認」や「意図的なデマ」を取り上げ、具体的なデータや歴史的な出来事、研究者のコメントなどを引用して、反証した連載記事をベースにした沖縄基地問題入門書。
地理的に重要だから沖縄に海兵隊を置くのか
「沖縄は脅威の場所から近すぎず、遠すぎない。戦略上、重要な位置である」。沖縄は他国から狙われにくく、逆に攻撃を仕掛けやすい位置にあり、普天間飛行場の米海兵隊が駐留するのに適しているという主張が一般的に流通しています。
一方で「中国の弾道ミサイル開発で、沖縄基地の脆弱性は増している」。米国の専門家も、沖縄の「地理的優位性」を絶対視していないようです。そもそも、脅威の主体によって沖縄からの距離は変化し、唯一の正解はないのが現状です。
「辺野古」反対運動は日当制か
「辺野古新基地建設の反対運動で日当が出る」という「神話」はかなり浸透しているそうです。実際はどうなのか。交通費も弁当代も自己負担。年金生活者が生活を切り詰め、それでも「両親を戦争でなくし、戦後も苦労した。新しい基地で、新しく苦労する人ができるのは嫌だ」と活動に加わる人を紹介しています。
「反対運動の資金源は中国」という情報もネット上で出回っていますが、これも明確に否定。団体への寄付は小口のカンパがほとんどで、決算はネット上で公開しています。
沖縄の基地は全国の74%
「国土面積0・6%の沖縄に、在日米軍専用施設面積の74・48%が集中している」。米軍基地の過重負担を取り上げる際の具体的な数値としてよく登場します。たしかに、小さな島に、いかに多くの米軍基地が集中しているかが分かります。
これに対する反論がネットでは飛び交っています。「39%」もその一つ。これは全国に在日米軍専用施設は85施設あり、うち沖縄にあるのは33施設であるという割合を示しています。この数値自体は客観的に正しいのでしょうが、不自然な比較でもあります。7842㌶の米軍北部訓練場も、0・4㌶の由木通信所(八王子市)も同じ1施設としてカウントすることになるからです。面積も機能も全く違う施設です。そもそも、0・6%の沖縄とその他99・4%の本土を1対1で捉えている時点でおかしい。仮に39%で通すにしても過重なのは一目瞭然です。
沖縄本土復帰50年
小学校の時の担任の先生がちらっと沖縄の話題に触れたことがありました。先生の出身高校は、和歌山県の古座高校だったのですが、大学で出身校を明かすと「沖縄から来たのか。大変だな」と言われたそうです。沖縄のコザから来たと間違えられたのです。先生が何歳なのか分かりませんが、大学生当時は本土復帰から間もないころで、周囲の関心も高かったのだろうなと思います。今はすっかり関心が薄れていますが、ここ最近は各紙とも沖縄復帰50年を特集しています。この機会に少し読んでみてはどうでしょう。朝ドラ「ちむどんどん」も本土復帰目前の沖縄が舞台で、こちらから始めるのもいいかもしれません。