送料無料は本当ですか?/ラストマイル

映画

ラストマイル(2024年、日本)

11 月、流通業界最大のイベントのひとつ“ブラックフライデー”の前夜、世界規模のショッピングサイトから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。やがてそれは日本中を恐怖に陥れる謎の連続爆破事件へと発展していく――。
巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)は、チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)と共に、未曾有の事態の収拾にあたる。誰が、何のために爆弾を仕掛けたのか?残りの爆弾は幾つで、今どこにあるのか?

決して止めることのできない現代社会の生命線 ―
世界に張り巡らされたこの血管を止めずに、いかにして、連続爆破を止めることができるのか?

すべての謎が解き明かされるとき、この世界の隠された姿が浮かび上がる。(映画公式サイトより)

熊野堂
熊野堂

僕史上最近10年で見たドラマで間違いなくベスト3に入る「アンナチュラル」を手掛けた、監督、脚本コンビによる映画。身近な問題をノンストップのエンターテイメントに仕上げる手腕はさすが。いつもアマゾンや楽天で買い物している人にも見てもらいたい問題作です。

お薦め度 

ポイント

・送料無料は本当ですか?

・日常に潜むもの

・動機はありか

・みんな同じレール

送料無料は本当ですか?

 ネット通販を利用したことがない人は、もはやかなり少数派でしょう。自宅まで商品を届けてくれて、ポイントもたまって、送料は無料。現実に体験していることですが、これって本当でしょうか?送料無料なのに、なぜ届くのか考えたことがありますか。世の中に、無料のサービスなんてなくて、誰かが負担しています。その誰かがあなたではない場合、気づかないことも多いかもしれません。送料無料は誰が負担しているのか。考えたことありますか。この作品はそんな素朴な問題をあぶりだします。

日常に潜むもの

 インターネット上のニュースもそうですよね。ほとんどが無料で読めます。でも、ニュースは無料で生まれません。いわゆる「こたつ記事」はありますが、そのもとは記者が現場を取材して書いたもの。労力がかかっているはず。これが無料だったら、記者の生活は成り立ちません。

 新聞社はどんどんヤフーに記事を出し続けます。ヤフーからわずかな原稿料をもらって。何ならどうすればヤフーで目立つところに掲載されるか、どんな記事、見出しが受けるか研究までしている人もいる。それって本末転倒では。何をやっても結局儲けるのはヤフー。この構造は運送業界も似ています。忙しく働いているのに儲からない。どんどん人手不足になっていく。そして、発注している側の利益だけが膨らんでいく。消費者はそんなことには無関心。便利だったらそうでいい。

 日常に潜むものは何か。映画を観ながら考えてもらえたらうれしいです。

動機はありか

 犯人は一体誰なのか。そして、犯人の動機があきらかにされますが、その動機でこんな無差別テロ的なことをやるものだろうか。そんな疑問を抱く人もいるはずです。僕もそう思う部分はあります。でも、一人目の犠牲で物流を止めれば、直接的な被害は起きない(業者側の損害は大きいですが)。作品中にはっきり明示されることはありませんが、それが狙いだったのではないでしょうか。予告もしたいたので、事前にとめることだってできたはず。でも、世界の仕組みは止まらない。この事件がなぜ起きたのか。考えるほどに日常に潜むものが見えてきます。

みんな同じレールの上

 作品の事件は決して他人ごとではありません。誰もがインターネット通販を利用する時代。誰もが当事者で、被害者で、もしかしたら加害者かもしれない。そこにこの作品の怖さがあります。

 同じレールの上を感じさせてくれる楽しいアイデアもあります。同じ世界観を有するドラマ、「アンナチュラル」、「MIU404」のメンバーが顔見世程度でなく、普通に物語に関わりながら登場します。世界はつながっている。みんな同じレールの上を走っているんだ。ドラマファンはかなりテンション上がります。まだドラマを観ていない人は、ぜひこの機会に観てください。今は配信でも観られます。

編集後記

 かなり期待値高めで見に行ったので、大絶賛というほどではなかったですが、やはり面白い上に考えさせられる。上質のエンタメに仕上がっていました。そして、主演の満島ひかりが、かわいいというかチャーミング。役柄は決していいわけでもないのですが。そんなことを凌駕していますね。

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