どんな本を読んできたか パート1(熊野堂)
本を紹介している熊野堂はどんな本を読んで育ってきたのか。こどもの読書週間(4月23日~5月12日)に合わせ、振り返ってみようという特別編(ありがたみはないが)。子どもにどんな本を読ませたらいいだろうと悩んでいる人に役立つかも。文部科学省が推薦しそうな本はあまり含まれていません。
無人島に現実逃避
子どものころ、夢中になったのが冒険もの。中でもロビンソン・クルーソー、十五少年漂流記は何度も繰り返し読んで、大好きだった。どちらも無人島が舞台。知恵を使って、仲間と助け合ってサバイバルしたり、自分の住みやい島にしていったりする姿にワクワクした。僕自身は完全にインドア派で、そうしたサバイバル能力は全くない。ただ、子どもながらに田舎や学校の閉そく感を感じていたのだろう。無人島で自由に暮らす生活は憧れだった。もし、自分でチーズを作ったり、新しい家を作ったりすることができれば。無人島での暮らしを想像しながら、現実逃避した。小学生のころは、あちこちに秘密基地を作っていたが、結構本気で家を出て、基地で暮らそうと考えていた。でも、ご飯だけは家で食べる算段だったから、そこまで本気ではなかったのかも。
キャンプブームの中、この2作品は普段本を読まない子どもにも入りやすい作品ではないだろうか。
すっかり怪盗気分
小学3、4年生でハマっていたのが推理もの。江戸川乱歩の怪人20面相シリーズ、シャーロックホームズ、ルパンなど名探偵が登場する作品は読み漁った。特に20面相シリーズで、20面相と明智小五郎・少年探偵団学理広減る知能戦は無茶苦茶おもしろくて、友達と怪盗、探偵に分かれさまざまな勝負をするなどなりきっていた。とても頭の回転が速い友人がいて、暗号文などもさっと思いついてしまう。彼に教わった発想法が社会人になっても生きている気がする。またシャーロックホームズに憧れた友人は、新婚旅行でついにロンドンにあるホームズの事務所を訪問。その時のお土産は十年以上我が家の玄関を飾っている。
ミステリーは今でもずっと読んでいるが、社会派とか日常系ミステリーが主になって、推理をメーンとしたものはあまり読んでいないかも。20面相やホームズを読んでいると名探偵コナンの登場人物の名前の由来が見えてくる。ホームズはアニメ化作品も面白かったし、現代もさまざまなバージョンの映画があってどれも面白い。変わり種では冷凍保存されていたホームズが現代によみがえって推理するというコメディ系の作品があったのだが、タイトルが思い出せない。もう一度見てみたいのだけれど。
異色の文芸誌
わりと偏った本を読んでいた僕の読書の幅を広げた雑誌がある。異色の文芸誌「ジャンプノベル」である。その名の通り、少年ジャンプの小説版。文学が低迷していた頃で、若者に本を読んでもらおうという意欲あふれる雑誌だった。雑誌はもう手元になく、記憶はあやふやだが、村上龍や立松和平、高橋 三千綱、北方謙三もいたかな。装丁はエンタメ調だけど、純文学系の作品も多くの掲載されていた。新人賞の募集もあって、村上龍や立松和平、栗本薫が審査員を務めていた。1回目の佳作に村山由佳がいて、「おいしいコーヒーのいれ方」もジャンプノベルで連載していた。と思う。1回目の入選は十字軍の時代の中東を舞台にしたジハード、野球を題材にした作品(タイトルは忘れた)。このどちらも滅茶苦茶面白かった。ただ、作者がその後活躍されたかどうかは分からない。
お薦めの本を紹介するコーナーもあって、そこでアルスラーン戦記やグイン・サーガを知った。純文学にファンタンジー、ホラー系もさまざまなジャンルに手を広げるきっかけの一つになった。冒険的で意欲的な文芸誌だった
編集後記
思い付きで書きなぐってしまったが、タイトルを書き出すだけでも作品と読んでいた当時が思い浮かんでくる。紹介した以外にもエジソンや野口英世、徳川家康などの伝記シリーズは一通り読んだ。歴史・時代もの、宮本武蔵や三国志、真田幸村を題材にした作品などもよく読んだ。吉川英治、柴田錬三郎、海音寺潮五郎、司馬遼太郎など小学生にはちょっと渋めの作品も読んでいた。「本は心のごはん」というが、子ども時代にとった栄養は今に多大な影響を与えている。