最愛(2021年、日本)
殺人事件の重要参考人となった実業家・真田梨央と、梨央の初恋の相手であり事件の真相を追う刑事、そして、あらゆる手段で梨央を守ろうとする弁護士の3人を中心に展開するサスペンスラブストーリー。2006年、梨央が青春時代を過ごしていたのどかな田舎町で失踪事件が起きた。15年後、時代を牽引する実業家となった梨央の前に事件の関係者が現れたことにより、当時の記憶とともに封印したはずの事件が再び動き出す。過去の失踪事件が現在の殺人事件へと繋がっていく…。
ドラマ公式ホームページより
のんきに連続ドラマを見ている暇はない。なのに、見始めたら止まらない。これは中毒性が高い。サスペンス好きは絶対見る方がいい。ネットフリックスで見ましたが、なぜテレビ放映時に観ていなかったのかと自分の眼力のなさに愕然とした作品。
お薦め度
どっち派か
主人公の実業家・真田梨央役は吉高由里子。ある目標を叶えるために東京の大学の薬学部へ進学。その後、30歳で母親が経営する真田ホールディングスの関連会社「真田ウェルネス」の代表取締役に就任。「世界を変える30代の社長」に選ばれるなど世間から注目されている。その一方で、過去の失踪事件から現在の連続殺人に至る一連の事件の重要参考人となる。
この梨央に関わる2人の男性を巡って、女性陣の間で「どっち派」論争が巻き起こったという。事件の真相を追う捜査一課の刑事で、梨央の初恋の相手でもある宮崎大輝(松下洸平)。梨央の会社の法務部に所属する弁護士で、あらゆる手段を使って彼女を守る加瀬賢一郎(井浦新)。正義感が強くひたむきな刑事と、清濁併せ呑む弁護士という正反対の2人。
妻は両方を応援していたようだ。松下は朝ドラ「スカーレット」で有名になった。その役柄がいまいち好きでなかった妻だが、今回の刑事役で松下の実力を認めたよう(なぜか上から)。井浦は個性的な役が多いが、今回の弁護士はかなりはまり役。一家、一社に一人こんな弁護士がいてくれたらというほど信頼できる。
タイトル通り、それぞれの「最愛」がテーマ。この3人だけでなく、親子、姉弟、会社。さまざまな「最愛」が描かれる。最初の殺人の被害者は犯罪者。しかもかなり悪質だ。でも、その父親が行方不明になった息子を探し続け、遺体が見つかった後も真相を求めて関係者に押し掛ける。それがさらなる事件につながる。決して同情はしないがここにも「最愛」が見える多重性がドラマをより深くしている。
記録と記憶
このドラマの謎を深くしているのが記録と記憶だ。梨央の弟には記憶に障害がある。携帯電話の動画に記録は残っているが、弟には記憶がない。記録はれっきとした証拠だが、その裏に何があったのか。当初はみんなが記録に引っ張られるが、やがて真相が見えてくる。記録と記憶の使い方が抜群にいい。そして、青春時代の記憶もキャラクターによって違う。あの時代に何が起きていたのか。記憶の描き方も秀逸。そしてタイトル題字の仕掛け。毎回、箱がパタッとしまって記録、記憶が閉じ込められるが、最終回で今度はその箱が開き、真相が明らかになっていく。細かいところまでいちいち凝っていて、目が離せない。
このドラマは登場人物がみな怪しい人ばかり(怪しく見せている)。上記の3人も疑われる。ちなみに僕のキャラクターお薦めは捜査一課係長(津田健次郎)、富山県警刑事(岡山天音)。津田の厚かましさ、時折見せるユーモアはいいスパイス。岡山は田辺市を舞台にした映画で主演。今回は主役級ではないが、地味にいい味を出している。
イケメン枠
弟役は高橋文哉。2023年ネクストブレイク俳優ランキングで常に上位に来る俳優で、確かにこの作品に関してはとても印象深い演技をしている。今妻イチオシの俳優である。ただ、その後多くの出演歴はあるものの、作品には恵まれていない。若手俳優の旬は決して長くない。次のステージに進めるのはほんの一握り。彼がブレイクするか注目しておきたい。もちろん、歳を重ねてからブレイクする俳優がいるのもこの世界。何が幸いするかは誰も分からないが。
編集後記
テレビの連続ドラマだったが、ネットフリックスで配信が始まったのを機に視聴した。しまったと思った。こんな面白い作品を見逃していたなんて。配信がなければ観ることはなかっただろう。一方で配信で観てよかったとも思う。続きが気になって一気見したくなるのだ。テレビ派はこれを1週間耐えていのか。すごい。まあ、それが連ドラの楽しみではあるのだが。やめられない、止まらない。作品を視聴する際は、その覚悟で臨んだ方がいい。韓国でリメイクされるらしいので、そちらも気になっている。