今年の流行りを知っておきたい方へ｜ウ・ヨンウ弁護士は天才肌

主人公のウ・ヨンウは新人の弁護士で、発達障害の一つである自閉症を抱える。ソウル大学のロースクールを首席で卒業し、司法試験にほぼ満点で合格。法律や判例は一度で記憶できる天才的な頭脳を持つ。一方で、社会生活は苦手。大手法律事務所に就職し、周囲の助けを借りながらさまざまな事件を解決し、弁護士として成長していく。韓国ドラマで、ネットフリックスで配信中。

ドラマを楽しみながら社会問題に触れられる。少々長いが、毎回飽きない仕掛けがいっぱい。普段韓国ドラマをあまり見ない人にもお薦め。

お薦め度　　

優しい物語

　ウ・ヨンウは社会性に難を抱え、相手の言ったことを繰り返す癖があります。共感することや感情表現も苦手です。それだけでなく、歩き方はぎこちなく、回転ドアも苦手。クジラが大好きで、クジラの話をし始めると止まらない。そんな調子なので、学業の成績はいいのに、就職試験はことごとく落とされてしまいます。自閉症というだけで、扉が閉じられてしまう。

　それは仕事を始めてからもそうで、自閉症を理由に依頼人から担当を外れるよう言われたり、同僚と一緒に歩いていても同僚の知人から障碍者とボランティアと見られたり。心が折れそうになることがたびたび起こります。一方で、周囲には支えてくれる人も大勢います。男性の上司は最初こそ偏見を持っていましたが、すぐに仕事ぶりを認め、働きやすいようサポートします。自身にミスがあれば素直に認める。理想的な上司です。

　ロースクールからの友人で同僚の女性弁護士も主人公の才能に嫉妬し、付き合う面倒臭さも感じながら、何かと手を差し伸べます。そんな彼女にウ・ヨンウがつけたニックネームが「春の日差し」。「ロースクールに通っていた時から、困難を経験するたび助けてくれた。休講情報を教えてくれたり、周囲に騙されないよう努力してくれた。今もペットボトルの蓋を開けてくれて、食堂で（好物の）海苔巻きの日を教えてくれる。あなたはあたたかくて、思いやりにあふれた人」。協調性がなく、他人に関心を示さないように見えるウ・ヨンウの真心が見える名シーンです。

社会問題

　ドラマは毎回１話につき１つの事件がテーマになっています。遺産相続、脱北者の暴行事件、女性の労働などいずれも韓国の社会問題を描いていて、日本にも通じるところがあります。第３話は自閉症の弟が成績優秀な兄を殺害したという事件でした。意思疎通が難しい自閉症の被告人とあらゆる手段を使って意思疎通を図るウ・ヨンウ。すると、実は弟は兄を殺そうとしたのでなく、自殺から救おうとしていたことが見えてきます。そして、その背景には競争の激しい学歴社会で、中高生が悩み、自殺も多いという現実世界の問題が反映されています。

弁護士ドラマ

　弁護士はドラマの題材になりやすい。日本のドラマ「石子と羽男」も弁護士の物語。こちらも、日常で誰でも起こりうるファスト映画やSNSのトラブルに挑む形式で、ウ・ヨンウの物語とも少し類似性があります。「ウ・ヨンウ」の事務所は大手で、必ずしも弱者側を支えるとは限りません。弁護士は「正しさとは」と葛藤を抱えながら、巨額の収入が得られる大手企業の案件に取り組みます。一方、「石子と羽男」は弱小事務所で、お金にあまりならない案件がほとんど。比較して見ると面白いかもしれません。

　中学か高校のころ、「都会の森」という弁護士のドラマがありました。内容は覚えていませんが、高嶋弟が主人公で歌手の徳永英明が出演していました。このドラマを見て、司法試験の受験者が増えたというニュースがありましたが、そんなことあるのでしょうか…。あの小室さんはどんな弁護士になるんでしょうね。