サマーフィルムにのって(2020年、日本)
勝新を敬愛する高校3年生のハダシ。
キラキラ恋愛映画ばかりの映画部では、撮りたい時代劇を作れずにくすぶっていた。
そんなある日、彼女の前に現れたのは武士役にぴったりな凛太郎。
すぐさま個性豊かな仲間を集め出したハダシは、
「打倒ラブコメ!」を掲げ文化祭でのゲリラ上映を目指すことに。
青春全てをかけた映画作りの中で、ハダシは凛太郎へほのかな恋心を抱き始めるが、
彼には未来からやってきたタイムトラベラーだという秘密があった――。(映画公式サイトより)

ミニシアター系の映画が少し元気でてきているのか。青春、映画制作、淡い恋、SFと好きな要素満載の作品。青春したことある人も、憧れるだけだった人にもお薦めです。
お薦め度
青春してますか?
みなさんは、高校時代に青春を謳歌しましたか。高校時代は無理でも、大学時代はしていましたか?僕は全然です。だからか、青春ものの作品は好きです。憧れなんでしょうね。
高校の映画部にこんなに部員がいるのか。大学時代に映画研究部にいた身としては、こんな高校があったらうらやましい。僕のいた部は幽霊部員が多く、圧倒的に男性ばかりでした。でも、今はスマホでも撮影できていまうし、動画もすっかり身近になったので、女性も増えているのかもしれません。いろいろ議論しながら映画をつくり、ちょっと恋もする。いや、このパターン大好きですが、もちろん縁はありませんでした。むさい先輩に囲まれて、夜中まで作業してましたから。
出演者自身が知名度がまだそこまで高くない時代の作品で、これからやるぞという感じがみなぎっているのもいい。合宿形式で撮影したようで、実際に出演者同士のチーム感も高まっていたのでしょう。青春のいい雰囲気が伝わってきます。
映画の未来
未来には映画がなくなっているという設定。ユーチューブで配信している「ラストシーン」も似た設定で、未来ではテレビドラマがなくなる。荒唐無稽でもありません。現在でもショート動画が流行りで、映画も倍速で観る人がいるくらい。タイパの悪いものとして、映画、ドラマが衰退していく可能性はあります。
すぐに答えを求め、考察したがり、すべてに意味がないといけないという時代。こんな時代を変えるためにも映画や小説、アートの力が必要です。そんな中、約3時間の映画「国宝」がヒットしているのはすごい。エンタメ性と社会性を兼ね備え、世界を考えるヒントとなり、多様な意見を共有し合える作品。というとハードルは高くなりますが、これから求められるのはそうした作品でしょう。
この映画はそこまで社会性が高いわけではありませんが、学校生活や今の社会に問いかける要素が盛り込まれているようです。
SF的構造
未来を変えるために、もしくは守るために未来から過去(現代)にやってくるタイムトラベラーというのは王道パターン。でも、未来人が出演した作品がハダシの監督デビュー作で、非公開になっている。非公開の作品を観たいから過去に来た未来人がその映画に出演する。となると、最初の撮影はどうしたのか。未来人が来るべき理由がない時に撮影したのではないか。というのが気になりますが、タイムトラベルものはそのへんの辻褄が合っているのか、合ってないのかよく分からないことがあります。でも、まあ作品としてはおもしろいので。その辺、似た要素がある「ラストシーン」は未来を変えたことで、変わった未来を実感するラストになっていました。
河合優実
河合優実のすごさを改めて実感させられます。えっ、このキャラ河合さんなの?というくらいイメージとは全く違うキャラになりきっています。「不適切にもほどがある」でブレイクする以前から、推しています。初めて存在をしったのはNHKのドラマ「17歳の帝国」。この時はインテリ感のあるキャラで、映画「PLAN75」では葛藤抱える市役所職員、極めつけはキャラのふり幅の大きいヒロインを演じたドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」。クールな探偵役の「ルート」もはまってました。今の朝ドラ「あんぱん」でもヒロインを食ってしまう存在感です。今後も注目したい俳優です。
編集後記
好きな要素盛りだくさんの作品で、にやにやしながら観ていたはずです。こうした作品はなかなか映画館で観られてないので、配信されると助かります。映画館は困るかもしれませんが。こんなに青春系が好きなのは、青春時代が満たされていないからなんでしょうね。でも、今が満たされてないよりはいいです。