政治と選挙のニュースが面白いほどわかる本(池上彰)
時給はいつも最低賃金、これって私のせい?(和田静香)
沈黙の艦隊16(かわぐちかいじ)
衆院選挙が15日公示されました。選挙のことなんて分からない、興味ない、という方。それではもったいない。仕組みと暮らしとのつながり、物語が分かれば、きっと見え方が変わるはず。楽しみながら、選挙通になれるかもしれない3冊を紹介します。
世襲とか一票の格差とか
選挙のニュースなんて見ても分からないよ。だから初めから見ないよ。そんな人にお薦めなのが「政治と選挙のニュースが面白いほどわかる本」。さすがに池上節。解説はとても分かりやすいです。
世襲はありですか
世襲といえば和歌山2区では二階俊博元自民幹事長の三男、伸康氏が立候補して世襲が是か非かが問われています。世襲は全然珍しくありません。小泉純一郎氏の次男、進次郎氏が有名ですが、安倍元首相や麻生太郎氏、石破茂首相も世襲議員です。すでに後援会組織があって選挙に勝ちやすい。資金もある。選挙戦に有利なことから、政界ではかなり幅をきかせています。そもそも議席は受け継ぐものではないので、世襲ということ自体がおかしい。一方で、職業選択の自由があるので、親と同じ職になってはいけないという法はない。結局は候補の家系図でなく、候補の描く未来図、政策で選ぶのが筋。世襲かどうかは本来関係ないはずなんですけどね。
一票の格差はありですか
世襲はまだ分かりやすいと思いますが、一票の格差はどう思いますか。同じ一票がどうも同じでないらしい。例えば地方では1万人の投票で当選できるのに、都市部だと5万人の投票がないと当選できない。都市部の1票は地方に比べて軽いよね、5分の1の価値しかないよね。というのが一票の格差の論理です。
都市部の人はなるほどと思うかもしれません。池上彰もそっち派のようです。でも、地方ではちょっと考え方が違います。そもそも選挙区が違う。同じ選挙区の中で、この人の1票はには5票分の価値があるみたいな話になると、格差がありますが、都市部と地方で単純に比較するのって本当に公平ですか。都市に人口が多いから、議員も多い方がいいですか。それって、別の格差を生みませんか。国会議員はその役割からも全国区で選ぶのもありでしょうが(大統領制なら全国で選んでいるわけですし)。そんなことを考えながらニュースを見ると、都市と地方のあり方が見えてくるのではないでしょうか。 また個々の一票についても、政治を本当によく考えている人と、頼まれたから投票しているだけの人が同じ一票でいいのか。これが公平なのか。いろいろな論が立てられます。
人口問題は他人ごとではない
政治なんて、選挙なんて庶民には関係ない。遠い世界の話と思っている人にお薦めなのが「時給はいつも最低賃金。これって私のせいですか?」。国会議員の小川淳也氏(立憲民主党)に質問をぶつけるという形で進んでいくので、自分を重ねやすいと思います。
人口問題、少子高齢化なんて耳にタコだよという人も多いはず。別に日本の人口1億人が正解というわけではありません。でも、今迎えている危機は世界初の危機なのです。人口が増える時代に合わせて経済成長をとげてきた日本は、急激な人口減少に対応する術をいまだに用意していません。個人でできることはありますが、国でないとできないことが多い。特に社会保障制度を維持するのが難しくなります。働く人が少なく、引退した高齢者の割合が増すからです。激変期にいる世代はしんどい。アラフィフなんてまさにそう。人口が多い世代だけに、高齢になった時、不安定になるの可能性が高い。それを今からでも考えないといけないけれど、なんだかずるずる先延ばしにしてきたのがこれまでの政治です。これ、全ての人に関わる重要な問題ですけど、考えたことありますか。
だって政治、選挙面白くない
とはいえ、政治や選挙なんて面白くないよ。全然興味湧かないよという人も一定数います。これは興味を引き付けられない政治家や報道にも責任があるでしょう。物語として選挙を楽しめるのが「沈黙の艦隊」です。
いやいや、潜水艦バトルのマンガでしょと思うかもしれません。でも12~16巻で展開される衆院選は熱い。党首討論も引き付けられます。自民党をモデルにした保守政党が、潜水艦やまとを巡って三つに分かれます。従来の日米同盟を守る保守本流のA、やまとを機に改革を目指すB、さらに革新的な思想でやまとを生かすC。対して野党は連合を組み、やまとによる混乱を起こした与党を攻撃します。
結果AとBの議席は同数。首相を決める選挙でまたしのぎを削ります。この駆け引き、どういう思想でA,Bにつくのか。Cと野党連合はどう動くのか。スリリングで、実際の政治もこんなだったら、みんな投票したくてうずうずするだろうな。選挙を面白く描いたマンガってほかに知らないですが、これを高校時代に読んだら、政治経済学部に行きたくなります。はい、僕がそうです。
編集後記
今回は総選挙特別企画。選挙って実は面白い。面白いという表現は誤解を生むかもしれませんが、でも面白いと思ってほしい。非常に自分に関係があって、それを少し動かせる可能性を多くの人が持っている。こんな体験ができる機会はなかなかありません。この本のいずれかを読んで、選挙のニュースを見たら、きっと世界が変わります。