配信ドラマは何がすごいか、テレビは終わるのか/地面師たち

ドラマ

地面師たち(2024年、日本)

100億円の市場価値を持つ希少な土地に目をつけた地面師詐欺集団は、あらゆる手段を使って前代未聞の巨額詐欺を成功させようとするが…。出演:綾野剛、豊川悦司、北村一輝(ネットフリックス公式ホームページより)

熊野堂
熊野堂

ノンストップで観てしまうドラマ。テレビでは製作が難しい、配信ならではの作品ではないでしょうか。ノンストップで観たくなる作品はテレビの連ドラこそ作らないといけないのかもしれませんが。攻めた、野心的な作品。クライムサスペンス、社会ものが好きな人はぜひ。

お薦め度 

ポイント

・テレビドラマは終わりですか?

・俳優陣

・緻密なのか荒いのか

・攻めるか、守るか

テレビドラマは終わりですか?

 地面師とは、不動産の本当の所有者になりすまし、詐欺のターゲットである買主にその不動産を購入させ、買主から代金をだまし取る詐欺師のことです。かなり巧妙で、法律的な知識も必要な詐欺です。ドラマは実際に起きた事件を題材にしています。実際に被害に遭ったのは積水ハウス。誰もが知っている企業です。ドラマでは石洋ハウスとなっていますが、他の企業名は実在のものが登場しています。

 これがテレビでは難しい。というか、できないようです。スポンサー企業に影響するからです。積水ハウスはもちろん、同業の不動産関係者も嫌がりますよね。報道はそうではありません。広告主に不利な報道をしないということはあり得ない。あり得ないけど、テレビはどうなのかなと思ってはしまいます。

 テレビドラマは配信に押されていると言われています。でも、良質の作品もまだまだあります。テレビドラマが終わったと僕には思えません。ただ、民放にやや元気がないのも事実ですが。NHKのドラマに面白いのが多い気がします。今期は大河も朝ドラも面白い。他にも良質の作品はNHKというケースが多いような。民放にも頑張ってほしいですね。

俳優陣

 アウトローなイメージに合った俳優陣が迫真の演技を見せています。豊悦の悪さ、頭のネジがふっとんだようなキャラ設定は迫力十分。ビールのCMで糖質がどうのこうのいっているキャラとは全く違う(笑)。さすがに第一線を走り続ける役者です。綾野剛の繊細さも、ピエール瀧のいい加減さもいい。薬物事件を起こしたピエール瀧に「いいシャブ入ったんか」みたいなセリフを言わせるところも配信の強さですね(笑)。主演を張れる人を惜しげなく出して、豪華な陣容になっています。

 騙される企業の山本耕史のパワハラぶりもなかなか。最近はコミカルな役も目立ちますが、引き出しの多い俳優さんです。そして、名前は知りませんがCMで有名な俳優さんも熱演していました。ニトリのNクールのCMに出ている男性です。山本の部下役ですが、あんだけ怒られても、寝る時はひんやりと眠れるのでしょうか。

緻密なのか、荒いのか

 詐欺は入念に仕組まれています。書類も法律に詳しい人物が偽造し、本物そっくりの免許証やパスポートも用意します。そして、土地所有者になりすます人物も、訳アリの人物で本人に似てそうな人をスカウトしてきて、仕込みます。物語冒頭の詐欺は10億円、メインの詐欺は100億円規模の大勝負。でも、緻密なわりに荒いミスもあるようです。ちょっとしたほころびから、大ピンチ、からの大逆転、またピンチでとにかく視聴者を引き付けます。

 この作戦、この人選、これだけの詐欺を仕掛けるには荒っぽすぎないか、と思う場面は多々あるのですが、それでもぐいぐい引っ張っていく力があります。始末屋の3人組が何気に優秀すぎて、だいぶ頼っているような気もしますが。

 

攻めるか、守るか

 かなり攻めた作品です。実在の事件を扱っている点も、きわどいセリフも、殺人の場面も。賛否が分かれそうなきわどいところを攻めています。俳優陣もそれに応えて、ドラマとしてはかなり出来栄えがいいです。その割に絡みのシーンは控えめですが。

 一方、同じ配信でも全然攻められていない作品がレビューで高評価を得ているのが気になります。「余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話」は、タイトルからイメージする通りに話が進み、全く逸脱しません。登場人物の役割もステレオタイプ。役者自身は悪くないどころか、結構いいのですが、とにかく安定している。芸術作品で安定しているのは誉め言葉ではあまりつかいません。このお約束が好きな人は、安心して見られることは間違いないです。

 その点で言えば、地面師たちも攻め切れていない部分は少しありますが、日本のエンタメもやるぞという気概は十分伝わってきます。

編集後記

 一気見必至の評判通り、続きが気になって仕方ない。お盆休みもあり、かなりのハイペースで観てしまいました。世界配信で海外の評価も気になるところ。配信のドラマは、作り手が作りたいことに挑戦していることが伝わって、やはり面白いです。大人の社会派作品をもっと観てみたい。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA