酷暑は図書館で過ごすのが贅沢/未来をつくる図書館

実用書

未来をつくる図書館(菅谷明子)

「図書館がなかったら、今の自分はなかった」。起業や芸術の支援、医療情報などが充実したニューヨーク公共図書館。地域密着の運営、独自のイベントや、ITを活用した情報提供はどのようにして可能なのか。個人の力を伸ばし、コミュニティを活性化させる活動とその意義を伝え、「市民が主役の情報社会」の方向を探る、示唆に富む報告。

                                        本書カバーより

熊野堂
熊野堂

図書館にはさまざまな人が訪れます。いったいどんな利用をしているのでしょうか。僕自身の利用は多い方ではありません。ちょっと調べものをするぐらい。フル活用できていません。でも、ここで紹介されているような図書館があったら、事情は変わるかもしれません。図書館って本を貸してくれるとこでしょ、ぐらいに思っている人こそ読んでほしい。

お薦め度 

ポイント

無料の貸本屋ですか?

・ビジネスの友

・芸術の支援

・ネット社会に真価

無料の貸本屋ですか?

 図書館は無料の貸本屋ーと思っている人は多いですよね。ベストセラーから書店ではなかなか手に入らない専門書まで、無料で貸してくれます。利用者の多くが本を買う代わりに借りる、しかも無料で。でも、これが図書館の本質的な機能でしょうか。本との接点をつくる。そして、その先に読書に親しむ人材や本から学んだことを社会に生かす人材を育てる。本の貸し出しはその手段ではないでしょうか。

 もちろん、利用方法自体は人それぞれでいいのですが、ベストセラー本を借りる順番を待っているなら、書店で購入すればいいのでは、と思わなくもないですが、それも自由です。実際、僕も大学時代はそんなに本が買えなかったので、文学全集的なものやハードカバーは図書館で借りていました。でも、好きな本は手元に置いて何度でも読みたいので、買っていました。

ビジネスの友

 公共の図書館が、利潤の追求を目標とするビジネスに関わっていいのか。議論はあるかもしれません。しかし、雇用の流動化や情報化に拍車がかかるなか、高度な情報にアクセスするのが難しい個人や中小の企業などに対する支援は図書館本来の使命と一致することもあり、ビジネスサービスは、個人の経済的自立を促し地域経済の活性化に役立つと捉えられるようになり、今では多くの公共図書館がビジネスの支援を行うようになっているようです。

 あなたの利用している図書館にそんなサービスはありますか?ビジネスマンが利用していますか?

芸術の支援

 芸術と図書館、相性はどうでしょうか。ニューヨークの舞台芸術を支えているのは図書館です。アーティストにとって公演そのものより、そこに到達する道のりの方がはるかに長いですよね。彼らに必要な資料を提供し、新たなインスピレーションを与えるのが図書館の役割です。現役の俳優、作曲家、指揮者、ダンサー、歌手、衣装デザイナー、舞台美術家、振付師、評論家など日常の仕事のために図書館を活用しています。

 ビジネスとして考えれば全く成り立たないことでも、文化を守り、新しく芸術を創造するのに必要なものを「公共財」と位置づけで、図書館が動いているのです。

 もっと芸術と市民の距離が近くて、一般の市民も図書館を通じて芸術を楽しむ。そんなまちになったら、すてきですよね。

ネット社会に真価

 インターネット時代に図書館は必要でしょうか。ニューヨークの図書館ではいま、ネットを経由した図書館利用が進んでいます。ウェブでの資料検索や貸し出し予約、データベースや電子ブックの閲覧ー。物理的な理由や時間不足で図書館に足を運べない利用者のためには「エクスプレス」という調査やコピーを代行する有料サービスもあるそうです。ウェブで申し込めば図書館の膨大な情報資源を知り尽くした司書たちが、利用者の要望に応じて即座に適当な資料を捜し出す。速ければ3時間以内に、受け取れるというからすごいですね。

 もちろん、デジタル技術は図書館を活用するための手段。検索システムは情報水先案内人です。

編集後記

 書店は減っているけれど、図書館は増えている。そんなニュースを読みました。和歌山県内でも個性的な図書館が生まれています。人が集う場所としての機能は充実してきている気がしますが、それは手段。その先の目的は何か。僕ももっと図書館を活用して、仕事も趣味も幅を広げてみたいなと思いました。

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