本屋大賞って面白い、面白くない?

コラム

本屋大賞20年

出版界の春の風物詩となった本屋大賞。今年20回の節目を迎えた。作家や評論家でなく、全国の書店員が「いちばん!売りたい本」を投票して選ぶ。当初は直木賞と比較された。アンチ直木賞的な立場だったからだ。「直木賞は、本当に取るべき作家が、取るべき作品が取っているか」。読書好きなら一度は考えること。さて、本屋大賞はどうか。

ポイント

・歴代受賞作品

・本屋大賞の意義

・本屋さんの実力

歴代受賞作品

小川洋子「博士の愛した数式」、恩田陸「夜のピクニック」 、リリーフランキー「東京タワー」

佐藤多佳子「一瞬の風になれ」 、伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」

湊かなえ「告白」 、冲方丁「天地明察」 、東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」

三浦しをん「舟を編む」 、百田尚樹「海賊とよばれた男」

和田竜「村上海賊の娘」 、上橋菜穂子「鹿の王」、宮下奈都「羊と鋼の森」

恩田陸「蜜蜂と遠雷」 、辻村深月「かがみの孤城」

瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」 、凪良ゆう「流浪の月」

町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」 、逢坂冬真「同志少女よ、敵を撃て」、凪良ゆう「汝、星のごとく」

 本屋大賞は僕にとって比較的相性のいい賞である。全20作品中、12作を読んでいる。受賞作家で見ると、1作品も読んだことのないのは4人。芥川賞や直木賞の作品も読んでいるが、割合はここまで多くない。受賞をきっかけに読んだ作品もあるが、大抵はもともとファンだった作家が多い。

本屋大賞の意義

 権威に関係なく、読者に近い賞というのがウリだろう。「売れている本」ではな「売りたい本」というコンセプトもいい。実際、受賞作には地味な良作も多い。「夜のピクニック」は特別大きな出来事は起こらない。ただ友達とひたすら歩く物語だが、良質の青春小説で、本屋大賞に選ばれたことで多くの人に読んでもらえたと思う。

 一方で、「売りたい本」に偏りが出てきているとも感じる。同じ作家が二度受賞していることもあるし、ノミネートの常連もいる。単純に売りたい本なのだからそれは仕方ないかもしれない。でも、大賞じゃなくても「売れる」本はもういいから、本屋大賞に選ばれないと世に広まらなそうな作家をもっと発掘する賞であってほしい。と一読者としては思ってしまう。

 野球で言えば芥川賞甲子園での優勝直木賞プロ野球の新人賞と言った作家がいたが、だとしたら本屋大賞は最多勝やホームラン王ではなく、「この選手うまいよな」という通が好む作家に与えてほしいかな。タイトルと関係ない選手がいいけど、あえていえば最高出塁率とかベストナインかな。

本屋さんの実力

 本屋さんと図書館は、読書好きが憧れる仕事の一つ。本屋さんで自分好みの本を売って生活できたらどれだけ幸せか。それでは商売は成立しないと分かってはいるけれど、そんな思いを抱いてしまう。本屋大賞は決定後、全国の書店に特設コーナーができて、受賞作を平積みして販売する一大イベントになった。本屋さんの実力が出版界をも動かしている。

 その実力を普段から発揮してほしい。いろいろな工夫をしている書店はあるが、特に地方だと置いている本は売れそうな本に限定される。もちろん、今はネット書店もあるから探すこと自体はそれほど難しくはないけれど、書店を巡回しながら出会いたいという願望は根強い。最近は小さな個性派書店も続々と登場している。本屋さんが並ぶ商店街みたいなのもあっても面白いかも。

編集後記

 とりとめなく、書き連ねたが、結局僕は本屋大賞には結構期待している。やはり、選ばれた作品の半数は僕好みだし、お薦めしたくなる作品だ。でも、もっと知らない作品、作家に出会いたい。いろいろな本に接している書店員さんだからこそできることがある。ネクストブレイクの作家を生み出してほしい

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