中国の戦国時代は智将、猛将、名将続々

タイトル

キングダム(原泰久)

時は紀元前、春秋戦国時代。いまだ一度も統一されたことのない中国大陸は500年もの動乱期。
戦国七雄の一つ「秦国」の身寄りのない少年・信と漂は、今は 奴隷のような身なれど、いつか武功をあげて天下一の将軍になることを夢見て修行に励む。そんな二人が偶然、秦国の大臣に出会ったことから運命の歯車が動き出す。

週刊ヤングジャンプ特設サイトより

中国史が好きな人はもちろん、日本の戦国時代が好きな人、「どうする家康」で歴史に興味を持った人もハマる要素満載。時代や国が違えど、戦国の魅力は共通。しかも、スケールは断然大きい。これを史実と錯覚されても困りますが、中国史入門に最適。

お薦め度  

ポイント

・多彩なキャラクター

・日本人好みの時代設定

・メディア展開

多彩なキャラクター

 マンガらしく多彩なキャラクターと圧倒的な熱量で日本人になじみのない名前にもすんなり入っていける。主人公の信(秦の国の信というややこしさはあるが)は、ある意味主人公らしい熱い一直線の人物。親友であり君主である嬴政は、後の始皇帝。初めて中国を統一した人物である。キングダムの世界では、理想に燃える若き君主で度量も大きい。もちろん、歴史上も偉大な人物だが、史実では猜疑心が強い印象を与える。さまざまな物語でも悪役になりがちだ。始皇帝以外に日本でも有名なのは呂不韋。他国の一商人から秦の先代を王位に付け、宰相として国内で圧倒的な権力を持つ。一説には嬴政の実の父親ともされる。日本では呂不韋を主人公にした小説で有名である。

 多彩な登場人物の中で僕が好きなのは昌平君、桓騎、蒙恬、騰昌平君は文武両道の総司令官。登場時は嬴政に敵対している呂不韋陣営の幹部だったが、嬴政の才覚を認め強力な味方になる。多くの弟子を抱え、人材育成でも貢献する。桓騎は盗賊あがりの将軍。神出鬼没の戦術で敵を翻弄するクールさと残虐性を持つ。人格者が多いキングダムの武将の中で異質な存在だが、敵の虚をつく戦術は痛快で一番好きなキャラクター。蒙恬は3代続く将軍の家柄で、作中では小隊を指揮する才気あふれる若き武将。史実では北方の異民族を撃退して功績を残している。騰は大将軍の副将という位置にいたため、登場初期はそれほど目立たなかったが、知勇を兼ね備えた武将として活躍する。飄々としてまだまだ底が知れない不思議なキャラクター。

 秦の陣営だけでも紹介しきれないキャラクターがいるのに、舞台の戦国時代に国は七つ。他の六国にも強力なライバルがひしめく。最大のライバルは趙の宰相・李牧。史実では彼も北方の異民族からの侵略に対抗して中国を守った英雄。作中では屈指の天才軍師として描かれ、優れた策略と味方をも欺く徹底した情報封鎖で、中華の名だたる大将軍らを討ち取る。

日本人好みの時代設定

 日本で中国史といえば、圧倒的に人気なのが三国志。あれは後漢の話で、キングダムの時代はさらに昔にさかのぼる。秦が天下を統一し、その後項羽と劉邦の覇権争いがあり、劉邦が築いた王朝が漢となる。

 春秋戦国時代もさまざまな小説の題材になっている。群雄割拠の時代は人気があるが、戦乱が長いということは飛びぬけて優れた人材がなく、天下を統一して平和をもたらすことがなかった時代ともとれる。その点、天下統一に動き出すキングダムの時代は、英雄が多数登場し、時代もダイナミックに動く。

 キングダムでは立派な人物に描かれ、実際に初めて中国を統一した嬴政は優秀だったことは間違いないだろうが、問題も多々あった。始皇帝暗殺を題材にした小説や映画もあり、その中では敵役として登場する。実は日本とも縁が深い人物である。不老不死の霊薬を求めて日本に来た徐福の伝説は和歌山県をはじめ、各地にあるが、この徐福を日本に派遣したのが始皇帝だった。もっとも、不老不死の霊薬なんてないけれど始皇帝の命令に逆らえないし、船と物資の労力を大量に提供してもらって、日本に逃げてしまおうというのが実態だったという説も…。

メディア展開

 原作はマンガ(現在も連載中)だが、アニメ、実写映画、舞台にとさまざまなメディア展開がされ、新たなファンを増やしている。僕も原作は少し読んだことはあったが、基本的にアニメ、映画で追いかけているライト層。アニメでは絵の迫力、精密さがマンガにかなわない。少し前に大阪であった原画展を見てきたが、圧倒的な迫力だった。映画は無理があるのではと思いつつ鑑賞したところ、なかなか楽しめる。映画の第3弾は7月に公開予定。5月14日には第2弾がネットフリックスで配信される。

 

編集後記

 僕も中国史に興味を持ったのは三国志がきっかけだったが、今ではいろいろな時代の小説を楽しんでいる。中でも隋唐時代は個性的な登場人物が入り乱れ面白い。唐は領土が広いだけでなく、文化的にも豊かでさまざまな文化人も生み出している。西遊記の題材になった三蔵法師も唐の時代だし、有名な詩人・李白も唐。唐の李世民による貞観の治は、源頼朝も徳川家康も参考にしたと言われる。中国のこの時代に、日本は何をしていたか。比較して見ると面白い。遣隋使とか遣唐使とかは教科書にも出てくるので馴染みがあるはず。

 

 

 

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