THE FIRST SLAM DUNK(2022年、日本アニメ映画)
父を亡くして幼くして宮城家の大黒柱となったソータ。リョータと妹のアンナ、母の支えになっていたソータだが、海釣りに向かったまま帰らぬ人となる。家族の中にぽっかりと空いた喪失感は埋まらないまま、一家は沖縄を離れ、神奈川に移る。リョータもまたソータの死を受け入れられず苦しみながらも、兄との唯一のつながりであるバスケだけは続けていた。そしてインターハイ2回戦、神奈川代表湘北のリョータは亡き兄ソータの夢とともに最強王者・山王工業に挑む。
公式サイトより
原作ファンなだけに、クオリティーは大丈夫かと半信半疑で観に行きましたが、これは間違いない。スラムダンクの世界に没頭できます。原作を読み返したくなること必至。
お薦め度
観る価値あり
週刊少年ジャンプで1990年から96年まで連載された井上雅彦さんの大ヒットバスケットマンガ「SLAM DUNK」。連載終了から26年を経て、映画になりました。原作、脚本、監督は井上さん自身が手掛けています。原作のファンですが、だからこそ最初は不安しかありませんでした。お金払って映画館で観る作品なのかと。でも、大丈夫。ファンなら間違いなく楽しめる内容です。僕はテレビアニメ版を観ていないので、声優が変わったというのも全く気になりませんでした。
宮城リョータを主人公に構築しているものの、ストーリーは原作の山王戦とほぼ同じ。アレンジはしていますが、そこは原作者。感動シーンは過不足なく抑え、辻褄ももちろんあっていて、ストレスはありません。そして、CGを使った絵がとにかくリアル。体と体のぶつかり合い、試合全体の動きが本物のバスケの試合を見ているようです。テレビアニメではこうはいかないはず。試合結果は当然知っているけれど、手に汗握って「試合」を観ていました。観客の中には最終盤「あー」とか「うおー」とか歓声上げている人がいるほど。ほんと迷惑だったけれど、気持ちは分かる。そこまで入り込める出来です。アニメ映画なんてと思っている方、ファンだったら観て損はありません。
キャラクターの魅力全開
スラムダンクのキャラクターはみんな個性的で、キャラが立っているのですが、実はプライベートな部分はほとんど描かれていない。家族まで登場するのは赤木家くらいで、それもほんのちょっとだったと思います。なので、映画版の主人公、宮城に兄弟がいて、沖縄出身だったことも初めて知りました。宮城は原作でも大活躍していますが、スタメン5人の中で一番物語が少ないキャラクターでもありました。その宮城にスポットを当てるのが原作者ならではかなと。メンバーで一番の低身長168センチ。これはバスケ選手としてはかなり低い。特別背が高い印象がなかった三井でも180センチを超えています。ゴリこと赤木に至っては2メートル近い。そんな中でスピードと判断力の速さを武器に戦う宮城の活躍は、さらに低身長の僕にはとても痛快です。
宮城以外のキャラクターも生き生きと躍動します。中でも三井。倒れそうになりながらも3Pを決め続ける姿は圧巻。そして、宮城の過去のシーンでは、中学時代にストリートバスケで偶然出会っていたことが描かれます。原作にはない行間。1対1で対峙した宮城は、三井に兄の姿を見ます。赤木との過去の衝突なども原作にはないエピソードで、これが現在の試合をより盛り上げてくれます。
本来の主人公桜木とライバル流川の活躍もたっぷり。けがで選手生命の危機にある桜木を引っ込めようとする安西監督に対し、桜木が言い放つ名言。「オヤジの栄光時代はいつだよ…全日本の時か? 俺は……俺は今なんだよ!!」は恥ずかしながら思わず泣けてきました…。劇場で興奮して叫んでいた人を馬鹿にできません。はい。
最高の試合
山王戦は作品中、屈指の試合です。最強の敵を相手に、各キャラクターが試合中にくじけそうになりながら、さらに成長していく。厳しいマークを受けながらも3Pを決め続ける三井、日本一の選手沢北と対峙し、その壁を超えようと大きく変貌する流川、大黒柱赤木も大きな壁にぶち当たり、自分の役割を見つめ直します。
原作で他に好きな試合は、神奈川予選の翔陽戦、海南戦ですね。翔陽戦は三井が復活するシーン。3Pのエリアに下がってシュートを決めるシーンは何度見ても興奮します。海南戦では赤木がケガで抜ける中、流川1人の活躍で王者海南に食い下がるシーンが熱い。今でもテンションを上げたい時、この試合を読み返します。主人公の出ていない試合も面白い。陵南対海南はPGにポジションを変えた仙道と県内最高選手牧の対決、突如現れた福ちゃんの活躍など見どころが多い。
インターハイでは湘北の試合以外はほとんど描かれませんが、一体どんな名勝負があったのか。海南が2位でしたが、優勝はどこだったのか。またどこかで描いてほしいですね。インターハイ後も気になるところ。映画は意外なラストが待っています。