絵画は難しい思っている方へ|楽園のカンヴァス

処方

楽園のカンヴァス(原田マハ)

効能・注意

・絵画の楽しみ方が広がります。

・美術館に行きたくなります。

・ただし、ニューヨークまで行きたくなるかもしれません。

こんな話

 ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日、招かれたスイスの大邸宅で巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵画に出合う。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手掛かりとなる古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは。

絵画を見る時間

 美術館を訪れた際、1枚の絵をどのくらいかけて鑑賞していますか?ある調査では、興味がない絵を見ている時間は1、2秒だったそうです。僕はその絵の中心(主題)は何か探しながら見るので、もう少し長いですが、それでもその場に立ち尽くしてずっと見ているということはないですね。もっと深く楽しむには、描かれた時代背景まで探っていくこと。この作品は画家の創造の根源に迫るミステリーです。

 画家を知るにはその作品を見ること。何十時間、何百時間もかけて、その作品と向き合うことだそうです。では、一番長く絵を見ている人は誰でしょう。第一に挙げられるのはコレクターです。研究者や評論家より長く絵に向かっているはずです。以前にニュースで絵画の最高落札額が510億円だと聞いた気がします。信じられないような額を払ってでも所有したい、見ていたいというコレクターは絵が好きという範囲を超えていますね。

 コレクター以上に絵、それも名画に向き合い続けている人がいるとすれば、美術館の監視員ですね。僕が特別展のたびに足を運んでいる美術館は、来館者が少なすぎて監視員がマンマークの状態。絵を見ている僕が見られている気がして落ち着かないんですよね…。

ルソーって誰だ

 ルソーと言えば、社会の教科書にも出てきた思想家のジャン=ジャック・ルソーしか知りませんでしたが、「夢」を描いた画家のアンリ・ルソーはもちろん別人です。長らくパリの税関職員として勤め、40代になってから本格的に絵筆を握った遅咲き。というか、生きている間はろくに評価されず、子どもの絵だと揶揄されていた不遇の画家です。

 「夢」の舞台は密林。右手にぽっかりと明るい月が昇っています。南国の花々や茂みから目を輝かせる動物、裸身の女性。色彩はカラフルだけど、物悲しいちょっと怖さもある。というのが僕の印象ですが、みなさんはどうでしょう?

大塚国際美術館

 この本を読んでルソーの作品が見たくなり、訪れたのが徳島県鳴門市にある大塚国際美術館。陶器製の板に名画を焼き付けて作成したレプリカですが、世界25カ国190あまりの美術館所蔵する名画約1000点が楽しめます。ピカソの「ゲルニカ」ムンクの「叫び」レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」「最後の晩餐」など誰もが知る作品がずらり。写真撮影もOK。叫びの前で同じポーズで記念撮影なんてこともできます。僕はやってませんが。

 この本で絵画の面白さに目覚めたら行ってみる価値ありです。残念ながら「夢」はありませんが、「戦争」「蛇使い」など他の代表作が展示されていました。ここなら、1、2秒で終わりということはないでしょう。館内はとても広く、歩き疲れますが1日中過ごせます。

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